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【MARVEL】This is my selfishness

第10章 9th



仕事に行く時は声をかけるよう言ったバッキーに再度お世話になったお礼を言って、ようやく自分の部屋に帰った。

良かった、鍵もスマホもお財布も無事で。
ケリーさんが入れてくれていたメイク直しのコスメたちも無事だ。
何一つ欠けることなく荷物が戻ってきたことに安堵する。


ベッドに腰掛け、横に倒れた。
そのまま部屋をボーッと見る。

……現実味がない。
今の事じゃなく、昨日のこと。
レオポルドさんに銃を突きつけられている時は怖くてたまらなかった。
それなのに、今はもうあれは本当にあったことだったのか、夢だったんじゃないかと思う。

けれど胸に残る火傷気味の痕や数カ所あるアザや痛み、そしてテレビをつければあの騒動に関しての報道が放送されていて、夢じゃなかったことを突きつけられる。

あの時、撃たれなかったからわたしは無事にここにいる。
それは事実。それが事実。


怖かったけど、でも殴られたりしたわけじゃない。


それなのに、バッキーの部屋で寝ていた時、ドアベルの音に異様にびっくりした。
それだけ安心して寝ていたのかもしれない。疲れていて熟睡していたからかもしれない。


しかしわたしの心臓は激しく脈を打って、冷や汗が出るように緊張した。
その心臓を落ち着かせるまで、来客のほうへ行けなかった。


フラッシュバックした。
ドアベルが鳴り、確認しに行った時、開けていないのに開いた扉。
そこには銃を持つレオポルドさん。


あの光景が脳を過って、ドアベルの音にただ驚いただけではないことを悟った。


要はトラウマになっているのだ。ドアベルというものが。
音は全然違うのに。
扉の向こうにいる人は本当に安全な人?信じれる人?
そうそう経験することじゃないということは日常的じゃないということ。
とすれば。完全に安心は出来なくとも「そうないことだから」「いちいち驚かなくても大丈夫」そう考えてしまえばいいことなのに。


たった1回の経験がトラウマになってしまった。
トラウマはそういうものかもしれないけど。



『もう、大丈夫……』


口に出した方が飲み込めるのではと、わたしは枕を抱きしめながら頭を沈めた​───────






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