【MARVEL】This is my selfishness
第3章 3rd
『え?』
「君の腕も触っていいか?」
真剣な顔をしてると思ったら今度は悪戯っ子のような顔をする。
『えっ!なんで?』
「俺の腕を触ったんだから俺にも君の腕を触らせるべきだろ?」
さも当然のように言われると何も反論できない。正しくその通りだもの。
人の腕を触っておきながら自分の腕は触らせないというのは不平等……
大人しく右腕を差し出す。
バッキーがわたしの腕を義手の左腕で下から支えると、右の──彼の本来の手でスウ、と撫でた。
『んっ』
その撫で方が思ったよりもくすぐったくて、思わず声が漏れた。
自分で触っても何ともないけれど、人から触られる場合は自分の意思やタイミングじゃないせいか、感覚が敏感になる気がする。
「君の腕も綺麗じゃないか」
いつの間にか目を強く瞑ってしまっていたようで、バッキーの声にハッと目を開けると周りの明るさが目に染みた。
『そ、そうかな?』
バッキーは気にしてないかもしれないけれど、先程声が漏れたのが恥ずかしくてバッキーをよく見れない。
「キメが細かくて若々しい肌だな」
フッ、と力の抜けたように笑うバッキーの言葉がおかしくてついわたしも笑いがこぼれた。
『嬉しいけど…若々しい肌だなんて』
まるでバッキーがおじいちゃんみたいな感想だと思った。
だってほぼ同年代の人に言われることの無い言葉な気がして。
わたしの笑いのポイントが分からなかったのかバッキーは不思議そうに首を傾げていた。
何となく、この子の雰囲気に惹かれる。
明るすぎず、暗すぎずない性格に心地良い笑い声や不思議な雰囲気。
洗脳が解けて、この腕をワカンダのシュリ王女から授かった後、王女自身「これすごいでしょう!本物の腕みたいよね?!」と自画自賛の言葉や女性兵士からは「王女様がお作りになられたものだから当然でしょう」と鼻高々に王女への賛辞を受けたことはあった。
けれどあの世界の人口が戻った決戦後、民間人として暮らすようになってからこの腕をこうやって直接誰かに見せたことはなかった。