【MARVEL】This is my selfishness
第3章 3rd
『バッキーもお洗濯?』
体温が上がるのを誤魔化すようにバッキーに言うと「ああ、」と言って自分の左手に持った衣類を洗濯機に入れた。
バッキーは洗剤類をランドリー室に置きっぱなしのようで、置いてあった洗剤を目分量で入れていた。
洗剤を元の場所に置き、こちらを振り返ったバッキーのその手を見て、ハッとした。
長袖から覗く左手の色が、肌の色ではなかった。
バッキーは最初に会った時から黒い手袋を付けていた。その後見かけた時も黒い手袋をしていた気がする。
シャワーの途中で出てきてくれた時はさすがに付けていなかったけど、あの時は確か左手は見えていなかった。
…触れていい話なのかな…。
一瞬だったと思いたいけど、気づかれるほどに見てしまっていたのか、バッキーがわたしの視線に気づいた。
「この手か?」
ぎし、とベンチが軋む。
バッキーはわたしの右側に座って、少し袖を捲り左腕を見せてきた。
『その…今まで見たこと無かったな、って……』
見せてくれているその左腕は手首よりもさらに上まで黒光りしていて義手のようだった。かなり自然に動いている気がする。義手と表現するのも相応しくないのでは?と思うほどに。
「普段は外に出る時は手袋をしてるからな。今は洗濯しに来ただけだから付けてないが」
何があって義手なのか、とか気になることもあるけれどそれよりもその腕に触れてみたくなった。
『…触ってみてもいい?』
わたしの言葉に少し驚いた表情をして、「もちろん」と答えてくれた。
手のひらを上にしてわたしが触れるのを待つその左腕にスゥ、と触れてみる。
『わぁ…綺麗ね…』
光の加減でキラキラと黒く光るその腕は人の腕のようなカサつきもベタつきもなく、ツルツルでサラサラしていた。
筋肉の動きもわたしが思っていた義手とは異なり、本当に人の腕のようだった。
『わたしの腕より綺麗』
顔を上げると、思っていたよりも近くにバッキーの顔があった。
『!』
「…君は不思議だな」
まじまじと目を見据えられて胸の鼓動が騒がしくなる。