【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
さすがのバッキーも驚いたようで、目を丸くしてわたしを見る。
『ご、ごめん、、家の鍵もバッグの中だ…!』
「ロンバルドのBARでもなく?」
『貴重品は持って行こうと思って、ハンドバッグにスマホと財布と家の鍵入れてたの』
ドレスに着替える前の服や、普段のバッグはロンさんの家に置いてきたけれど、さすがにスマホと財布と家の鍵は貴重品だと思ってハンドバッグに入れていた────ということを部屋を目の前に思い出した。
立て続けにミスが発覚する自分に情けなさで泣けてくる。
『どうしよう…管理人さんに言う?でもこんな時間だし、今から来てもらうことって出来るのかな』
ああ、しかもわたしはスマホ持ってないからバッキーに呼んでもらわないといけない。
「ミアさえ良ければ───」
ぐるぐると考えていると頭上から少し躊躇いがちな声が聞こえた。
それにあわせて見上げると、バッキーと目が合った。
「俺の部屋に泊まるか?」
「ミアの部屋みたいに快適ではないが……まあ、寝れないことはない」
バッキーが灯りをつけながら部屋の奥へ進んでいく。
つい先日、気付いたらお邪魔していたバッキーの部屋にまたしてもお邪魔することになるとは思わなかった。
しかも今度は意識がある状態で。猫(もどき)じゃない。
「部屋着らしい部屋着もなくてな」
長袖のシャツを渡されたのでそれを上半身にあててみる。
……少し不安な丈感だ。
バッキーもそう感じたらしく、困ったように唸り声を上げた。
「…普段寝る時はパンツ一丁なもんでな。このデニム、履いてみてくれ。ベルトで締めればなんとか…」
『脱衣所、借りるね』
脱衣所で借りていたジャケットとガウンを脱ぎ、新たに借りた長袖のシャツを着る。デニムのズボンも履いて、シャツをインして────ずり落ちちゃう…。
落ちそうなズボンを支えながら戻ると、「あー、やっぱりそうなるよな」と言いながらわたしの腰にベルトを差してくれる。
「…穴が足りない」
きゅ、と締めてくれたものの、通せる穴がなかった。