【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
『……ねえ、何でレオポルドさんが捕まった?のか聞いてもいい?』
「ああ、どうせ明日にはワイドショーにでも流れるだろうからな。武器の密輸入やら販売やらをしてたらしくてな。俺もホテルの部屋に入ってからサムからの電話で知った」
わたしが着替えたときの電話……あ、
『どうしよう、ドレス……靴──は一応無事だけど、ケープとドレス、あとハンドバッグも置いてきちゃった……』
手元に必需品として用意していたのに。しかもスマホもその中だ。
完全に身一つで出てきてしまった。いや、出たくて出た訳じゃないけれど……。
「サムがなんとかする。……とは言っても電話がないのは不便だよな?」
『スマホがないのはちょっと心配かも…』
あれは個人情報の塊だ。テクノロジーやらデジタルやら何が何だか分からないくらい、わたしには複雑に感じるあれは、失くしたら最後だと思っている。
「最優先で確保してもらおう」
そう言いながら、バッキーは無線ではなく自身のケータイを出して電話をかけ始めた。
すぐにサムさんは出てくれたらしく、わたしの荷物や着替え、特にスマホを第一に確保してもらうよう伝えてくれた。
「今日中には届けに来れないが、明日の午前中にはアパートに届けに来る。ドレス類はクリーニングにも出してくれるそうだ」
『良かった……』
クリーニングにも出してくれるなんてアフターケアがととのってる…!
アパート前に着くと、先に降りたバッキーがまたわたしを抱えてくれた。
「ミアは靴を持つ係だ」と言われ、バッキーが脱がしてくれた借り物の靴を持ったまま抱えられた。
2人しか住んでいないアパートはやはり静かで、少し前まで事件に巻き込まれていたとは思えない妙な気分になる。
非日常な経験でソワソワと落ち着かないような気持ち、
バッキーに抱えられてドキドキする気持ち、
いつものアパート、いつもの家に帰ってこれたという安心する気持ち。
いろんな気持ちが混ざった『妙な気分』。
いつも通り階段はギシギシと軋む。
『あ!!!!!』
「!?」