【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
〈レッドウィングはある程度は俺が動かしてるようなもんだが、AIも搭載されていて自動的に自分で学習して動いてる部分もある〉
「で?」
〈…俺は何も指示を出していない。レッドウィングは今、ミアに従って飛ぶのをやめて彼女の膝の上にいるってことになる〉
バッキーはケースをその場に置き去りにし、後で誰かしらに回収してもらうよう頼む。
辺りを警戒しながら次のチェックポイントへと向かいながら2人は会話を続ける。
〈今はレッドウィングを両手で掲げて機体を調べるかのようにチェックしてるな〉
……多分ミアにとっては珍しいものだからそうやってチェックしてるのだろう。
姿は見えないが、その光景を想像してバッキーは小さく笑った。
〈…何か話しかけてるな〉
サムはそう言うと、こちらの無線とミアのところにいるレッドウィングの無線を一方通行状態で繋げた。
こちらの会話はミアのほうには聞こえない、というまるで盗聴のような感覚だが、話しかけてる内容を聞いてバッキーは足を止めかけた。
《ねぇ、君。君はわたしを守れるくらい強いなら、バッキーのことも守ってくれない?》
《彼、今から危ないことをするみたいなの。お仕事だから仕方ないって分かってるんだけど、それでも……》
《怪我、してほしくないな……》
囁くように話すその声にバッキーの喉が鳴った。
バッキーは任務で危ないことをするのは慣れている。
しかしミアはそうじゃないはずだ。
一般人なのだ。鍵を全て閉めてバッキー以外部屋に入れるなと言われるほどに自分だって危険な場所に身を置いていると分かっているはず。
それでも自分の安否を気にするミアに体の内側が熱くなる。
「………」
もうミアのほうのレッドウィングの無線通信を切ったようでサムは〈とても思われてるじゃないか〉と言ったが、その声は揶揄するようなものではなかった。
「早く終わらせてミアのところへ戻る」
一刻でも早く終わらせて、ミアを安心させてやらねば。
その想いがバッキーの走りを強化した。