【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
考えないようにと思いつつも考えてしまうのは「今から誰かを愛すなんて」とか言いつつもやはり男だからだろうか。
何歳になっても男は男ってか。それは強化兵士でも変わらないというのがそれこそ滑稽かもしれない。
『ちょっと…風に当たりに行ってもいい?』
「ああ、わかった」
もたれかかるようにさせているミアがテラスを指差す。
連れて行くためにミアを横抱きに抱える。
『っえ!ちょ、バッキー?!』
「どうした?」
そのままテラスに向かおうとすると、抱えたミアが急に慌て出す。
視線を下にずらし、顔をのぞき込むと全身を赤く染めたミアが視界に入った。
────なるほど。照れてるのか。
どうやらこの状況を恥ずかしがっているらしい。確かに周りの客に見られているが、そんな事よりもミアの具合を整えさせる方が大事だ。
気にせずそのままテラスへ向かう。
そもそもミアの恥ずかしがるポイントが分からない。
結構大胆なことをしていると思う時は平然としているのに、何故抱えられただけで恥ずかしがるのか。
そう思いながら、テラスの豪奢な手摺にミアを座らせた。
テラスから外は地続きだから危険性はない。万が一のために片手はずっとミアの腰を抱いている。
『涼しい……』
タイミングよく少しだけ吹いた風に目を細めながらミアが呟く。
『こんな所、座っていいのかな?』
「駄目とも書いてないからいいだろ」
『そういうの、屁理屈って言うんだよ』
フフ、と優しく笑うその表情に一瞬で目が奪われる。
ああ、そのマスクが邪魔だ。
そう思った時にはミアの頬に手を伸ばしていた。
頬とマスクのラインを撫でると『なあに?』と酔っているせいか舌っ足らずにミアが首を傾げる。
その言葉に大したことも返せず、「具合は大丈夫か?」と聞くと『だいぶ』と返ってきた。
『人酔いもしてたのかも』
「ああ、そうかもしれないな」
外は会場内と打って変わって、別世界のように静かな時間が漂う。