【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
先程までと打って変わって、さすがにタンゴ調の曲を踊れる人は少ないようで、フロアの中心に出ている人の数は少ない。
そんな中、主催者のレオポルドさんが先程連れていた女性の1人と共に踊っていた。
すごい熱量を感じるほどの本格的なダンスだ。
『す、すごい…』
「…仮面舞踏会といえど、珍しい曲を流すと思ったが…自分が踊りたかったんだな」
会場の人達は呆気に取られる人や、称賛を送る人で分かれた。
タンゴに見惚れながらもグラスを片手に普段よりもお酒を飲んでいた。
カルーアミルクをお供に、デザートのケーキに手を出す。
『おいし〜!』
色んな種類のケーキが用意されていて、ついつい制覇する勢いで食べ進めていく。
『バッキーも食べないの?』
新しくケーキをお皿に取る度に一口ずつバッキーにもあげているけれど、それ以外に全然食べてない。もしかしてもうお腹いっぱいなのかな?
「…さすがに食べ過ぎじゃないか?」
マスクの奥で眉を顰めた気がした。
…引かれた?
『どれも美味しくてつい…でもちゃんとあっちのパスタとかも食べたからデザートだけじゃないし…』
食は偏ってないはず。
「それに飲みすぎだろ」
そう言いながら、バッキーがわたしのグラスを取り上げ、クイッとカルーアミルクを飲み干す。普段飲むお酒より甘いせいか、飲んだ後に微妙そうな顔をした。
『こういう甘いカクテル系なら飲めるもん』
普段はBARで働いていても飲むことは無いし、ましてや飲みに行くこともない。
カルーアミルクであればコーヒーリキュールと牛乳もしくは生クリームで簡単に作れはするけれど、自分でわざわざ買うこともない。(自宅だとコーヒーで済むし)
だからつい飲んでしまう。
「飲めたとしても普段飲まないから配分が分かってないだろ」
『……』
「ムスッとしても駄目だ」
まるで子供を優しく叱るような口調で言われると、女性として見られてないことをまざまざと思い知らされるようだと思い、フンッ、とそっぽを向いた───────『あ、れ、』瞬間、足元がふらつき、何かにぶつかった。