【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
「それでは移動が終わりましたね?さて、今からこの仕切りを退けますよ。その後はどうぞパートナーを探してください。もともと一緒にいたパートナーでも良し、はたまたこれを機に新しいパートナーを探しても良し─────そしてこの後のダンスタイムに誘っては如何かな?」
ニヤリ、と妖しく笑った気がした。
レオポルドさんの言葉を頭の中で反芻しながらその意味を考えていると、言った通りに男女を仕切っていたパーテーションが音を立てながら前後に捌けていく。
────このパーティ、ロンさんが参加していたらどちらに分かれたんだろう…ルドルフさんも出席予定だったから、ルドルフさんが男性側でロンさんが女性側だったかな?それとも2人とも男性側だったかな…
ふと、そんなことが頭を過った。
「お嬢さん」
その声に顔を上げると、見知らぬ男性が立っていた。
周りを見ると、パーテーションがなくなってから各々行動を始めていたようだった。
『、わたし、ですか?』
「ええ。良ければ僕とこの後、ご一緒していただけませんか?」
男性は口元に笑みを浮かべ、わたしに手を差し出している。
OKならこの手を取って、ってことかな…?
『えっと…』
わたしは…
─────「何があっても、誰に声をかけられても、俺だけを見てろ」─────
『…もう、約束した人がいるので…』
「Hey.」
わたしが言ったのとほぼ同時に、男性の肩に手が置かれた。
「彼女はアンタとは踊らない」
その声にハッとする。
仮面をしていてもそう言い放ったのがバッキーだと分かった。
キッパリとバッキーに言われたからか、その男性は口を不満そうに歪めながらも何も言わずに去って行った。
その後ろ姿を見送った後、正面に立つバッキーの腕が伸びてきた。
そっと両の手が前からわたしを囲うように腰に添えられる。
「約束した人ってのが誰か聞いても?」
そう言いながら、バッキーの口角が片方だけ上がる。
『…分かってるくせに』
「君の口から聞きたいんだ」
その言葉と共に右手がわたしの左の頬に添えられる。
真剣な眼差しで真っ直ぐに目を射止められる。