【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
分かれた反対側────男性側を見ると同じように辺りを見渡す人もいれば、余裕があるような佇まいの人もいる。
会場が広く、あまり視力が良い方ではないわたしとしてはこの中でバッキーとはぐれてしまったら見つけるのに少し時間がかかりそう。
今はまだ分かれた時のままだからほぼ直線上にバッキーの姿が確認できる。
わたしがバッキーを見つめたままであるように、バッキーもまたわたしを見ている気がした。
…さっきの、「俺だけを見てろ」ってどういう意味だったんだろう…?
バッキーは今から何が始まるか予想がついてるのかな?
言われなくても、割と結構前から、わたしはバッキーしか見てない気がするんだけど─────
カチンッ
何かが弾けるような音がした瞬間、視界が真っ暗になった。
それと同時にキュルキュルと何かが回るような音がする。
突然の暗さに会場全体がざわつき出す。
左肩に誰かがぶつかってきたようで、小さく「ごめんなさい」と聞こえた。
だんだんと暗さに慣れてきて、視界がぼんやりと輪郭を帯びてきた──────と、思うと今度は先程と同じく何かが弾けた───恐らく照明のスイッチの音がしてパッと視界が真っ白になる。
明暗の差に目がチカチカして眩しさに目を細める。
暗くなった時よりも早く、じんわりと辺りの様子が見えてきた。
『!』
突然の事に動けずにいたわたしの眼前には壁があった。
正確にはパーテーション。
会場の端から端まで、あの蛇腹折の豪華なパーテーションが区切っていた。
男女をお互いに見えないように区切ってある。
「それでは今から男女別にその場所から移動してもらいます。スタッフの指示に従って」
レオポルドさんは階段からまた高らかに言った。パーテーションがあるおかげでその姿は少ししか見えないけれど。
戸惑いながらも、スタッフの人に指示された位置へ向かう。
わたしの周りにいた女性たちもそれぞれバラバラの場所へ行く。
みんな着けている仮面が違うけれど遠目では分からない。
ドレスもみんな華やかで目がいくけれど、それぞれが良い分、それが逆効果になって一人一人が大勢に紛れ込んでしまっているような…