【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
『き、綺麗な色だよね…』
宝石も、バッキーの瞳も…という言葉は飲み込んだ。
恥ずかしくて少し俯くと、ネックレスに触れていたバッキーの手が、今度はわたしの顎のラインをスゥ、と撫でた。
そのくすぐったさに口元が緩む。
『何?』と首を傾げても、バッキーは「何でもない」と返すだけだった。
そのまま本当に何も無いかのように、バッキーは料理が並ぶテーブルへ戻るようにわたしを連れて、お皿に新しく料理を盛り始めた。
そしてわたしはその一瞬の隙をついて、自分の胸を確認した。
うん、上からの視線じゃいまいち分からない…。
料理とお酒を楽しんでいると、スタッフさんが何やら準備を始め出したことに気づいた。
蛇腹折りになったキャスター付きの豪華なパーテーションを会場の前後にそれぞれ1つずつ控えさせている。
何だろう、と思っているとレオポルドさんが、パーティーが始まった折に自身が降りて来た階段へと軽やかに上がり、「皆々様」と高らかに声を放った。
「ここで1つ、私が提案した催しを皆様に体験して頂こうと思います。まずは男女それぞれ会場の右側、左側に分かれて下さい」
その言葉に戸惑うように、しかしワクワクするように、会場の人がざわめきだす。
わたしも不思議に思いながらも指示された側に行こうと足を前へ踏み出す─────と、腕を掴まれた。
『?バッキー?』
掴んできたのはバッキー。
どうしたんだろう、と振り返ると、ジッとわたしを見つめていた。
「何があっても、誰に声をかけられても、俺だけを見てろ」
『え?』
「いいな?」
『う、うん…?』
力強い眼差しに半ば強引に頷かされた気がしながらも、首を縦に動かすと、納得したのか、掴まれていた腕が自由になった。
指示された側へ行くと会場全体も男女に分かれたようだった。
わたしの周りにいる女性たちは不安そうに辺りの様子を伺う人もいれば、何が起こるか予想ができているのかこの状況を楽しんでる人もいた。マスクをしているからはっきりとした表情までは分からないけど……