【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
「おや?綺麗な色をしたネックレスだね」
密かに悩んでいると、スゥ、とレオポルドさんの手がわたしのネックレスの元へ近付いた。
ネックレスの飾りにレオポルドさんが触れた時、微かに鎖骨に当たって、ほんの少しだけ体が跳ねた。
『これもロンバルドさんのご厚意で貸して頂いて───』
「彼の瞳の色に似ているね」
その言葉に一瞬、固まった。
レオポルドさんが意味深長にバッキーの様子をちらりと伺った気がする。
彼、とは?と返したかったけどそんなの分かりきっている。
どう返そうかと悩みながら、曖昧に微笑むと、特に返事を期待してた訳じゃないのか、レオポルドさんは何も気にしてないように「そうだ、」と話を切り替えた。
「上の部屋、使いたくなったら誰でもいい、スタッフに声をかけてくれ。好きに使えるように手配しているから、是非泊まって行ってくれよ」
『えっ、本当に良いんですか?』
映画館で会った時のはリップサービスというやつだと思ってた。まさか本気だったとは。
正直、こんな高級ホテルに泊まることはないからものすごく泊まっていきたい。
「いつでも好きな時に声を掛けていいからね。ああ、ただある程度遅くなってからがいいかもな。ちょっとした催しもするからそれも参加してみてくれ」
『催し…?』
「ああ。何をするかは始まってからのお楽しみさ。では、パートナーと楽しんでいってくれ」
レオポルドさんはニッ、と口角を上げてヒラヒラと手を振りながらまた別の人へと挨拶に行った。
『催し物ってなんだろうね?仮面舞踏会だからやっぱりダンスかな?』
「ミア、部屋に泊まりたいんだろ」
わたしの疑問を無視する形で言い当てられた。
『…なんで分かったの?』
「目が輝いてた」
『マスクしてるのに分かったの?』
マスクをしているとその奥の目は見えにくいと思うんだけど……そう思いながらバッキーの目を覗くと、少しだけその瞳が揺れた気がした。
「…確かに俺の目の色に似てるな」
目が合っていたと思うと、フッと視線が外され、その視線が今度はネックレスへと移ったらしい。さっきレオポルドさんにされたようにバッキーがネックレスの飾りをゆっくりと手に取った。