【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
「そこからもらっていいのか?」
『うん、どうぞ』
お皿に盛ったのをバッキーに渡す代わりに、バッキーがウェイターさんからもらったグラスを1つ渡してくれた。バッキーの分のグラスは一旦テーブルに置く。
「キールだそうだ」
『へぇ…』
BARで働いてる身ではあるけど、なかなか自分で飲むことはない為、恐る恐る口に運ぶ。
確か白ワインにクレーム・ド・カシスを足したもの…だったよね?
辛口の白ワインに甘いリキュールが混ざって、わたしでも飲めるようになっている。
ワイン好きにもカクテル好きにも合うお酒らしい。
『うん、美味しい、と思う』
「これも美味いぞ」
お皿に盛られた料理を味わうバッキーが教えてくれる。よし、じゃあもうちょっと盛ろう。
料理とお酒を楽しみだして、そう間もない頃にパーティーに参加するお客さんたちが先程までとは違った様子で色めき立つようにざわつき出した。
『?』
さわさわと人が中央に集まりだし、上座の階段を見上げるようにしている。
『どうしたのかな?』
「…あいつだ」
バッキーの声に目を凝らしてみると、階段の上から女性を両脇に連れて、一人の男性が現れた。
『あ、』
ロンさんたちをパーティーに誘い、代わりにわたし達が参加することを許可してくれた男性────ジョン・レオポルドさんだ。
彼が現れるのと同時に拍手が上がった。主催者の彼を讃えるものだろう。
わたしとバッキーもそれに倣い、拍手をする。
「今宵は私が主催する仮面舞踏会に参加して頂きありがとう。是非楽しんでいってくれ」
にこやかに、そして高らかにそう言い放つと同時に拍手は大きくなり、オーケストラが高々と演奏を始めた。
それを受けてジョン・レオポルドさんは傍に居る女性にマスクを着けてもらい、階段を降りて来た。
『わたしもう楽しんじゃってた』
「そうだな」
来て早々に料理を食べ、お酒も飲んだ。言われる前に楽しんでた…。
降りて来たレオポルドさんを目で追っていると、何人もの招待客がレオポルドさんを囲うように挨拶待ちしていた。