【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
───今日のバッキーはいつもより魅力的で、わたしのことをすごく女性扱いしてくれてる気がする。
それもこれも、いつものわたしより大胆なドレスと綺麗なメイクのおかげかもしれない。
身体中の熱に焦りながら、なんとか呼吸をするわたしは熱っぽい視線を向け続けてくるバッキーに緊張が高まる。
『…似合ってるなら、良かった…』
困るというのはどういうことだろうと思いつつもようやく返せた言葉は周りの雑音に消されたかもしれない。
会場内はホール部分と上座の方に上の階と繋がる大きな階段が円を描くように造られていた。
ホテルの外側に面した壁側には立食用の食事が沢山並んでいて、もう片側の壁側には中庭に通じる豪奢な背の高い観音開き式の扉がある。
ホール真ん中が開けられてるのは多分ダンス用にだろう。
よく見れば円を描くように作られた階段に包まれるようにして空間の空いた内部分にオーケストラのような人達が控えていた。
『…本当にすごいね…』
「そうだな」
自分は場違いなのでは、とソワソワするわたしとは違ってバッキーは堂々としたものだ。
その佇まいにただならぬオーラを感じているのか、周りにいる人達がチラチラと盗み見ているような気がする。
その気持ち、分からんでもない。というか分かる。
…と、思っていたら、グゥ、と音が鳴った。
ハッ、と自分のお腹を両手で抑える。
「何か食べとくか?」
その声に顔を上げると、少し笑いをこらえたような顔をしたバッキーが料理が並ぶテーブルを視線で示した。
『う、うん…』
「酒を貰うにも腹がすいた状態じゃ良くないだろ」
「君は酒が得意じゃないしな」とお腹を抑えるわたしの腰に手を添えてテーブルの方へリードしてくれる。
『わあ…すごい…見たことない料理ばかり…』
自分で作ることも、食べに行くこともなさそうなお洒落な料理が所狭しと並んでいる。
スイーツまでしっかりと揃えてある。
バッキーがいつの間にか準備してくれたお皿とフォークを受け取りながら食べたいものをお皿に乗せていく。
『バッキーも食べる?』
わたしが声をかけると、バッキーは丁度ウェイターさんからお酒の入ったグラスを受け取ったところだった。