【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
初めてのマスケラに感動しながらもスタッフの人に付け方を教えてもらう。
仮面の横に着いているリボンでつけるタイプらしい。滑りにくいように作られていて、仮面の内側が鼻梁にフィットして意外とズレない。
仮面を押さえていると、付け方を教えてくれたスタッフさんがそのまま後ろでリボンを結んでくれた。
つけてくれたスタッフさんにお礼を言い、バッキーはどうしたかと思って狭くなった視界でバッキーを探すように振り返ると、バッキーも仮面をつけれていた。
『おぉ…』
さすがバッキー、様になってる。
顔の上半分を隠そうが、カッコ良さが滲み出ている。
『似合ってるね』
「君も。すごくいい感じだ」
そう言いながらバッキーがわたしの頬を撫でる。
「いつもより可愛い顔が少し隠されるのは残念だが」
『!?』
仮面の奥の綺麗な瞳がジッと見つめてくる。
ほ、本気で言ってるの…かな…?バッキーは褒め上手で人をその気にさせるのが上手いから……それを真に受けて喜んでしまうわたしなんだけど…。
小さく『ありがとう』と呟いて、スタッフさんの案内についていくように動くと、バッキーは既にお決まりのようにわたしの腰に手を添えた。
ホテル内は室温が調整されてるとはいえ、左側に大きく入ったスリットがスースーする。
自分で挑戦したいと思って選んだドレスだけどやっぱり似合ってないんじゃないかと今になってまた緊張する。
スタッフの人に会場を案内してもらい向かう途中、わたしの左側にピッタリと沿って歩くバッキーが「スリット、深くないか?」と耳打ちしてきて恥ずかしくなった。
『普段こういうの着ないから挑戦してみたの。やっぱり似合ってない?』
綺麗って言ってくれたけどドレス自体は似合ってなかったかな…?
会場に足を踏み入れるとその豪華さに目がチカチカする。天井に輝くシャンデリアや豪勢に咲き誇る花瓶に活けられた花や、絶対に普通の家庭にはないような調度品。
それらに目を奪われていると、先程のわたしの問にバッキーが答えた。
「似合いすぎて困ってる」
わたしにしか聞こえないような声量で耳元で囁かれる。
バッキーの吐息が耳にかかった事にも、その言葉の内容にもわたしの心臓が大きく脈を打ち始める。
化粧が崩れるんじゃないかと思うくらい、顔が、体が熱くなる。