【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
そのまま黒スーツの男性に付いて、お店を出ることになり、ケープコートをバッキーが後ろから肩にかけてくれた。
お店を出ると、日が落ちて暗くなってきた中でも分かるほど黒光りしたベンツがお迎え車のようでその後部座席を黒スーツの男性が開けると中へ入るように促される。
促されるまま乗り込もうとすると、すかさずバッキーのチェックが入った。……わたしは政治的な要人か何かなのだろうかと思うほどの徹底ぶりだ。
チェックが済んだバッキーに手を添えられながら中へ乗り込んだ。すぐにバッキーも乗り込んでくる。
先程の黒スーツの男性が運転席へ乗り込むと、「発車します」の声と共に車がゆっくりと動き出す。
『わたしこういう車、初めて』
何となく厳かな雰囲気にあてられて、小声で少し間を空けて座っているバッキーに言った。バッキーは口角を上げながら首を少し傾げると「似合ってるぞ」と嘯いた。絶対思ってないでしょ。
スモークフィルムが貼られた窓の外に流れる景色が次第に高級住宅やホテルが並ぶ街並みになっていく。
ネオンではなく、オシャレなライトアップが反射する。
わたし、今からパーティーに行くんだ。
落ち着いていた胸の高鳴りがまた騒がしくなってくるのを感じた。
パーティーが開催されるホテルに着き、車から降りる時もバッキーが手を差し伸べてくれた。導かれるように車から降りると一般のお客さんが入る出入口とパーティーの来賓客用が分かれていた。
わたし達を送ってくれた黒スーツの男性が「あちらの入口で招待状を提示してください。お名前が違うことも把握しておりますのでご心配なさらず」と丁寧に教えてくれた。
ちなみに帰る時も送ってくれるらしい。
『ありがとうございます』とお礼を言って、入口へ向かう。
その少しの距離もバッキーが腰に手を添えて隣を歩いてくれた。
ロンさんから預かった招待状を入口のスタッフに渡すと中身とそれぞれの名前を確認され、黒スーツの男性が言っていたように連絡が行っているらしく、なんの問題もなく通された。
ホテル内は室温が調整されている為、ケープコートを預かってくれると言うのでその場で預けた。
代わりに仮面舞踏会らしくマスケラを渡された。