【MARVEL】This is my selfishness
第2章 2nd
『夕方の6時から閉店までだよ』
そう答えるとバッキーの眉間にシワが寄る。
その顔を不思議に思い首を傾げると「閉店までって…閉店何時だ?」と聞かれる。
『夜中の2時。前まではバスの時間の関係で帰れなくなっちゃうから0時前には帰らせてもらってたけど、徒歩圏内なら関係ないから伸ばしてもらったんだ』
「治安は良い方かもしれないがさすがに危ないだろ」
『大丈夫だよ〜近いから走っても帰って来れるし!』
「念の為何か暴漢対策しろよ。しないと部屋に閉じ込めるぞ」
テーブルに置いていた左手を力強く握られた。
お隣さんに部屋に閉じ込められるとはどういうことだ…と思いつつ、優しいバッキーのことだから、真剣に本気でわたしのことを心配してくれてるのだろう。自分が暴漢に狙われるなんて思いもしないけれど、そうやって心配してもらえるのはすごく嬉しいし有難いことだからちゃんと受け入れようと思った。
『う〜ん…じゃあ催涙スプレーとか…?』
ひとつ提案をしてみたが、握られた手の力は弱まらない。
え、まだ他にも案を出せってこと?
『催涙スプレーニンニク臭とかは?』
「ふざけてるのか?」
バッキーの眉間のシワが深くなった。これじゃないらしい。
他?他って何がある?
『バッキーだったら何を用意する?』
「俺だな」
『え?』
バッキーがバッキーを用意するってどういうこと?というか人を用意するとかアリなの?
疑問符で頭をいっぱいにしながらバッキーを見つめると、力強くも優しい視線が返ってきた。
「連絡先を交換しよう。何かあればすぐに呼べ」
願ってもない申し出だった。
今までお隣さんと連絡先を交換したことなんてない。そもそも知り合って数日でこんな早く仲良くなることもなかった。
最初に彼の方から「仲良くしてくれると、」というのは言ってもらっていたけれど、連絡先を交換するというのは全く考えていなかった。
固まるわたしに不安を覚えたのか、珍しくバッキーの眉尻が下がった。
「…困る?」
『いや!いやいや!困らないよ!ただ、その、なんでそこまで気にかけてくれるのかなって思っただけ…』
「ほっとけないんだ」
真剣な瞳に見つめられると呼吸が浅くなり、喉が詰まる気がした。