【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
何気ない話をしながら、普段お店に行く時に通らない道を通ってみた。
随所でバッキーが「この道は一人の時は通らない方がいいな」とわたしに言っていた。さすがわたしのセキュリティ面の強化をしてれる人だ。
ゆっくりと探索するように歩いていると早めにお店に向かったはずだけど、実際にお店に着いた頃にはちょうどいい時間で、裏口から店内に入るとロンさんが「ぴったりね」と微笑んだ。
ロンさんから鍵を受け取ろうと思っていたらわたしにメイクを施してくれる人物が既に部屋にいるからとのこと。
そのまま部屋へ上がると───────
「いらっしゃい。さ、早く着替えちゃって」
『ケリーさん?!』
一瞬、部屋を間違えたかと思った。
ロンさんの部屋に先に来ていた人物─────わたしにメイクを施してくれる人物はケリーさんだった。
「貴方はあっちの部屋ね。こっちの部屋に来たら駄目よ」
わたしの後ろに居たバッキーを指さし、その指でバッキーの着替えが置いてあるらしい部屋を指さした。
それを受けてバッキーは小さく頷いて、言われた部屋へ入っていく。
ケリーさんと二人きりになる。
『えっと…』
「ああ、私がいると着替えにくいかしら?あっちでメイクの準備をしておくから大丈夫よ」
『あ、はい…!』
そう言うとケリーさんはドレッサーの前へ移動していった。
メイクをしてくれる人、というのが顔見知りで良かったと思う反面、やっぱりケリーさんを前にすると緊張してしまう。
いそいそと言われた通り服を脱ぎ、買った下着も身につけ、ロンさんと選んだドレスを手に取る。
足元から慎重にドレスを上げていく。タイトなデザインと繊細なレースを破かないように気をつけないと…。
そして最後はファスナー。
背中にある為、これまた慎重に上げていく。ウッ、きつい…!
下側と上側は良いけど、ちょうどその中間あたりが右腕も左腕もどちらから上げようとしてもちょっときつい…
「あら」
ウグゥ、ともしかしたら声が漏れていたのかもしれない。
こちらを見てなかったはずのケリーさんがわたしの様子に気付き、「触るわよ」と言ってファスナーを締めてくれた。
『ふぁ、ありがとうございます!』
「脱ぐ時はあの人に下げてもらいなさい」
『えっ』
耳元で妖艶な声で囁かれた言葉に目を丸くする。