【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
下着専門店を出て、アパートへ向かう。
帰ったらある程度家事を済ませておこう。
道中、再びぬいぐるみのお店の前で足が止まる。
何度見てもこの黒猫、可愛い…。
高さは多分60cmくらいはあると思う。顔と胴体だけでの話。座ってる状態で60cmくらいだとして、投げ出している足先まで入れたら80cm超えるかも?
毛の触り心地も良さそう───────そういえばバッキーの髪の毛も触り心地良かったなあ、と思い出す。
そして同時に当たり前のようにバッキーと同じベッドでくっついて寝ていたという事実も思い出す。
…1人で街中で顔を赤くしていたら変な人と思われちゃう…
火照る顔がショーウィンドウに映る。それに気づいてパッと顔を背けてアパートの方へ足を向けた。
エントランスに入る時、上の階から物音がした。見上げると、バッキーが屋上から戻ってきた所だったらしく、物音は外階段へと繋がる扉の音だったようだ。
「おかえり」
『ただいま。今屋上から下りてきた?』
「ああ」
『日向ぼっこ?』と聞くとバッキーは一瞬だけ面をくらったような顔をしてからくしゃりと笑った。…何か変なこと言ったかしら。
それにしてもバッキーが1人で日向ぼっこしていることがあるとは。
知らなかった一面を知ってフムフムと思っていると「用は済んだのか?」と階段を上がり終えた頃に聞いてきた。
『うん。意外と18時半まであとちょっとだね』
「そうだな」
するとわたしが入ってきたエントランスの扉が開いた。
わたし達以外に住人はいないのに…と思い、下を覗き込もうとするとバッキーがそれを制した。
わたしより前に出て1階を確認する。
「Hi!」
男性の声が聞こえた。
その声にバッキーは小さく「Hi」と返した。
「ここの住人?」
段々声が近づいてくる。
「そうだが」
「初めまして!俺ダニエル!ここの管理人だよ」
え?管理人さん?
管理人室はあれど、管理人さんを見たことがない。
階段を上がってきたダニエルと名乗る人物はバッキーの後ろにいるわたしを見て「Hi」と手を挙げた。
『こんにちは』