【MARVEL】This is my selfishness
第7章 7th
『バッキー、これ…』
「?」
畳んだシャツをバッキーに渡す。
『アイロンもかけようかと思ったんだけど、カッターシャツじゃないからパリッとしすぎても…と思って』
「ああ、全然構わない。ありがとう」
そう言ってバッキーは畳まれたシャツに顔をあてた。
『?!』
スウ、と嗅ぐ音がしたかと思うと、顔を上げて「ミアの匂いがする」と満面の笑みを浮かべる。
なっ、なにを…!
絶句するわたしをよそに「シャツ置いてくる」と言ってわたしの横を通り過ぎて部屋を出た。
洗濯したての服だから何か困る訳でもないけど、わたしの匂いがすると言って満面の笑みを浮かべられると勘違いしてしまう。
いや、でも偶然?わたしが使っている洗剤か柔軟剤がバッキーの好きな匂いだったっていうだけで何もわたしの匂いを好きって言ったわけじゃないし、思い上がるのは止そう───────と思っても顔の熱が治まらない。
うう、常に爆弾を落とされている気がする…。
パタパタと両手で顔を扇いで熱を少しでも冷まそうとしているとすぐにバッキーが戻ってきた。
薄手のフーディに黒いジャケットを合わせてカジュアルながらもカッコよく決まるのはバッキーだからこそかな?色味も落ち着いていて彼によく似合っている。
そういうわたしは襟付きのノースリーブブラウスをショートパンツにタックインして、その上からロングカーディガン。ショートパンツの下はタイツに白靴下、レースアップブーツを合わせた格好。バッキーの隣を歩くには幼かっただろうか?
「どうした?」
わたしが固まってしまっていたのか、バッキーが顔を覗き込んでくる。
『ううん。なんでもない…』
顔を上げて答えると同時にバッキーとの距離が縮まり、髪に指を通すように触れられた。
『…?』
顔を見上げると、バッキーはまじまじとわたしの髪を掬って見ていた。
何かついてる?
「やっぱり俺が洗って乾かすのと全然違うな」
「手触りも艶も違う」と感心したように口元に笑みを浮かべる。
「何かつけたりしてるのか?」
『ヘアオイルをドライヤーで乾かす時につけてるよ』
「へえ…」
夢中になるかのように何度もわたしの髪を梳いては、サラサラとその手から流れる様を見ている。