【MARVEL】This is my selfishness
第7章 7th
もしかしたら映画を観るのに部屋を暗くしてるから、かな?
観始めた頃はまだ陽も暮れきってなかったけど、今じゃすっかり外は暗くなって夜になっている。
意識し始めると良くないな…。
気持ちを落ち着かせて、観たかった映画へ集中する。
と、映画は冒頭からセクシーなシーンになってしまった。
わっ、これ、こんなシーンあったの…!
1人で観る時ならまだしも、誰かと観てる時に色っぽいシーンがくるとなんとも気まずさがある。しかもバッキーと観てる時だなんて……バッキーはどんな風に観てるんだろう、と隣を盗み見る───────
『っ、』
バッキーもこちらを見ていたようで、視線がぶつかって、思わず苦し紛れにポトフのお皿を手に取った。
前もこんなことがあった。あれは月曜日のお茶会のときだったかな…。
ど、どうしよう。絶対今のわたし変だった。
けれどバッキーは気にしていないのか、何かを言う訳でも無く、ただお酒の入ったグラスを手に取っただけだった。
きっとわたしだけが意識してるんだ。
映画のお色気シーンだって、今のこの状態も。
───────わたしだけがこんなに頭を悩ませているなんて、ちょっと悔しい。どうにかバッキーにも同じような気持ちにさせられないかな…
『っ!』
隣で息を飲む、声なき声が聞こえる。
テレビの画面には暗がりからこちらを見る、人ならざる者が映っている。
先程の映画を観終わって、ついにミアが言っていたミステリーホラーの映画に入った。
ミアは布団を頭から被り、その影に隠れるように画面を見ている。
時折、ビクッと布団の塊が動く。その様が何とも可愛らしい。
怖いのならば観なければいいのに。
ミアが観損ねていた映画は女性スパイもので、色仕掛けのシーンもあった。冒頭から男女のベッドシーンから始まった。
ミアはこういうシーンをどういう顔をして観ているのだろうと観察していると、ミアがこちらを見た。
一瞬目が合ったが、すぐに目を逸らされ、ポトフの皿を手に取っていた。
やはり映画でも見ていられないタイプなのだろうか?
反応の初々しさを見る度に愛しさを感じると同時に生きてきた世界が違うのだろうと思う。