【MARVEL】This is my selfishness
第7章 7th
アパートに着くと、すっかり当たり前のようにバッキーがエントランスのドアを開けてくれる。バッキーの方が荷物多いのに…。
階段を上がって、バッキーの部屋を通り過ぎてわたしの部屋の前へ。
鍵を取りだし開けてバッキーにも中へ入ってもらう。
「荷物、ここでいいか?」
『うん、キッチンで。おつまみと夕食用のポトフも今から作って置いとこうと思うんだけどバッキーはどうする??一旦部屋に戻る?』
「邪魔じゃなければ居てもいいか?」
『もちろん』
わたしが答えるとバッキーは黒い手袋を外してジャケットのポケットに入れ、そのジャケットを脱いだ。
「何か手伝うことは?」
『バッキーはお客さんだし…』
「準備してもらってばっかりだと申し訳ない。材料切るのくらい手伝える」
「刃物の扱いは得意なんだ」とバッキーが肩をすくめる。
『…じゃあお願いしようかな』
お言葉に甘えて、買ってきた材料をどう切って欲しいかを伝えて包丁を渡すと、わたしとは比べ物にならないくらい素早く切っていく。
わたしの方が味付けが間に合わないくらい。
『本当に得意なんだね…よく自分で作ってるの?』
「いや…仕事柄…だな」
少しだけ言葉を選ぶような、濁すような言い方をしたように感じた。
言いたくない事の1つに触れる事だったのかもしれない。
バッキー、自分のことを話すのは苦手そうだもの。
『そうなんだ』と気にしてないふりをして返事をする。
今はバッキーとキッチンで並んで料理を作っているこの雰囲気に浸りたいという気持ちもあった。
隣人として仲良くして欲しいという所から今は友人にもなって、こうやって友達と並んで料理を作るという日が来るとは思わなかった。
ひとりじゃないって幸せな事だ。
部屋に誰か親しい人がいるというのは、例え親しくても気を遣いすぎたりしてしんどいものだったりすることもあるかもしれないけど、バッキーだとそういう感じはない。
むしろ安心できる気がする。楽しいし。
バッキーも同じように感じてくれてるといいな。
2人で作ったおかげで思っていたより早く料理が出来上がった。
煮立たせる時間は変わらなくても具材を素早く切って貰えたおかげ。