【MARVEL】This is my selfishness
第7章 7th
『うん。好きな動物は何かって聞かれて、猫って答えたら猫になる催眠術を…』
「怪しい奴だ」
ムスッとした声音で言うバッキーが可笑しかった。
『ふふっ、お遊びだよ〜。そんな風に言わないの──────』
その時、何故だかじんわりと体が熱くなってきて、制服のリボンタイや襟首のボタンが窮屈に感じた。
いつもは感じないけど、体が熱くなったせいで息苦しくなったのかと思い、リボンタイを外し、襟元のボタンを1つ開ける。
「ミア?」
わたしを呼ぶバッキーの声が頭に反響する。
なんか……感覚が変───────
話している途中でミアの異変に気づき、呼びかけてみるが、ボーッとした様子で返事がない。
1度立ち止まらせて、顔を上に向かせる。
「!」
街頭に照らされたその瞳は少し潤んで、頬が上気し、口が薄く開かれている。
触れた肌はいつもより熱い気がする。
「ミア…?」
もう一度呼びかけると、小さく『にゃ』と声を漏らした。
にゃ…?
するとミアの手が自身のシャツのボタンにかかり、またひとつボタンを外した。
「?!」
『うぅ』
そのまま煩わしそうにまたひとつ、とボタンを外しだす。
「ちょ、っと待て」
酒のケースを抱え直しながら、抱えてない方の手で、ボタンを外す手を掴む。
谷間が見えてしまっている。ガン見するのもどうかと思いつつも目が行くのは仕方ない。
とりあえずこのまま急ぎアパートへ入ろうと片腕でミアを抱えると、先程よりもでかい声で『ンにゃあ〜ァ!』と揺れに合わせて鳴いた。
…猫みたいだ…。
急いでアパートのエントランスを開けて、ミアを下ろす。
「ほら、着いたぞ。部屋に───────」
スリ、
「っ、」
ミアが頭を擦り付けてきた。
ボタンが外され、胸元がはだけている状態で。
『にゃあ』
まるで鈴が鳴るような声で鳴きながら擦り寄ってくる姿は、甘えている猫そのものだった。
頭を擦り付けたあと、下から見上げてくるのだから、よく出来た猫の真似だ…と思ったが、先程の話を思い出す。
まさか───────催眠術が成功していた…?