【MARVEL】This is my selfishness
第7章 7th
ケリーさんが手を上げるのを見て、そちらへ向かう。
「1本、瓶ごと持ってきてくれる?」
『わかりました』
ちらりとバッキーを見ると、口角をグッと上げて、ちょっと嘘くさい笑顔をしていた。えっ、どういう気持ちなの、それ…
不思議に思いながらも1度裏へ引っ込み、発注ミスによりたくさん届けられたうちの1本を手に、ケリーさんとバッキーがいるソファーへ戻る。
それをテーブルに置くと、すかさずバッキーが手に取り、蓋を開ける。
『!』
そしてそのまま瓶に口をつけると、一気に喉へ流し込んだ。
『ちょ、』
「……」
その様子にケリーさんも唖然としている。
ゴク、ゴク、と喉を鳴らして1瓶丸々一気に飲み干したバッキーは顔色ひとつ変えずに空になった瓶をテーブルに戻した。
「これで1本分だ」
そう言うと、先にあったグラスを掴み、カウンター席へ戻って行く。
その様子をわたしもケリーさんも呆然と見送る。
「…彼、何者?」
『さ、さあ…?』
訳も分からないまま、ケリーさんとの間に微妙な空気が流れる──────と、丁度よくケリーさんをいつも指名するお客さんが入店してきたので、そちらの対応をした。
『ねぇ、大丈夫なの?』
「何が?」
元のカウンター席に戻ったバッキーに声を掛ける。
あれだけ一気に1瓶丸々お酒を飲んだのだから、急性アルコール中毒などになっている可能性もある。アルコール度数もそんなに低くないお酒だったし…。
しかし、わたしの心配を他所に当の本人はケロリとしている。
「ああ、あれくらいどうってことない。代謝が良いから酔わないんだ」
『そんなことある?』
「ある」
キッパリと断言するバッキーに何も言えなくなる。まぁ…異変がないならそれでいいんだけど…。
代謝が良すぎて酔わないって…じゃあお酒飲まなくても良いのでは?と思いつつも、わたしにはわからない酔わなくても飲みたくなる良さがお酒にはあるのだろうと考えることにした。
「ミア」
ちょいちょい、と端の方からアレックスに呼ばれる。
『?』
「どう?猫になった?」
その質問に一瞬、きょとん、と首を傾げてしまったが、すぐに何の事かわかった。