第1章 01
「どこまで着いてくるんですか?」
「んー?気分」
放課後、彼は私の帰路に着いてきた。今日は金曜日、早く帰らないと行けないのだが、彼が気になって、いつものように走って帰れない。
「ボロっちいな」
「暮らせるだけマシですよ、それではさようなら」
中に入れろと言われなくてよかった。さすがにそれは難しい。叔父は仕事の都合上、金曜日は午後から休みになる。早く帰って叔父の食事や欲の掃き溜めにならなければいけないのだ。
ガシャン!!
玄関の扉に灰皿が投げられた。幸い、割れることは無かったが、大きな音を立てた。玄関の時計をみると、いつもの帰宅より10分遅い。まずい。叔父は待たされるのが嫌いなのだ。
「遅いぞ!何をしていた!!」
「ごめんなさい」
半間くんが聞いているかもしれないと思い、声を下げるように言ったが、黙れと言われ頭を掴まれた。息が荒い。彼が興奮している。畳に投げ捨てられ、叔父がのしかかる。同級生からどんなにいじめられても、不良と言われる人に絡まれても、この瞬間の恐怖には勝てない。心の底から恐怖心が巻き起こる。
嫌だと暴れたい。でも、そうすると行為が長引く。避妊をして貰えないかもしれない。それは嫌だ。もっと苦しくなる。
「おい、締まりが悪いぞ!」
「ぅっ…」
首が締まる。ダメだ、この力加減では跡が残る。月曜日までに消えてくれるといいのだけれど。
臭い、熱い、痛い、苦しい。この地獄から抜け出したい。だけど、死だけは選ばない。それは、この男に、彼女たちに負けを認める行為のような気がする。いつか、いつかこいつらを……