第5章 05
声を荒らげる。うざったいとは思わなかった。こいつの怒りも苦しみも全部肯定してやろう。
真っ赤に染まった弥月に自分の着ていた上着を着せた。腰に回される手はいつもの半分の力も入っていない。落ちないようにいつもより丁寧にバイクを走らせた。死体は呼んでおいた奴らに任せる。明日には魚のフンになっているだろう。
「後悔してんのか?」
「…そんなわけないです。でも、実際にやってみると、こうもあっさり死んでしまうのかと思って」
「ふーん」
弥月は手に着いた血を確認して、浴室に走った。急に目が覚めたかのような動かだった。服も脱がず、シャワーを頭から浴びている。何度も汚いと呟きながら、手や腕、顔を擦る。
笑えるぐらい、弥月の精神は乱れていた。さらに、ポケットからナイフを取りだし、自分の腹を突き刺そうとする。弥月の肘あたりに腕を忍ばせ、それを阻止した。
「何してんだァ」
「汚い。この中にあと男のが何回も入ったんです。でも中は洗えないから…」
「だから切り刻もうってか。死んじまうだろ」
俺に捨てられないように、一定の距離をとって期限を伺っていたこいつが、今度は自分から消えようとしている。それがどうにも気に食わない。そんなことするぐらいなら、
「だったら、俺がもっと汚くしてやるよ」
濡れた唇同士を無理矢理引き寄せた。