第1章 01
「なんか言ってよ〜」
「つまんないじゃん」
「いいよ、もう行こ」
お金が無いのはバレているから、たかられることは無い。私は黙ってサンドバッグになればいいのだ。
「あはっ、びしょびしょじゃん」
背後の窓から男の声が聞こえた。ああ、そうだ。たしか彼は半間修二くん。入学当初から問題児って言われてる。同じクラスなのに、声を聞いたこともなかった。
「水浴びか?」
「こんな時期にそんなことをしたら、風邪をひいてしまいますね」
「ばはっ、違いねぇ」
5月と言っても、日によっては寒い日もある。今日はこれから雨が降るのか雲が厚くて、朝から日差しが届かない。風邪を引くと叔父が怒るから、早く乾かさないと。
ふぅーっと、半間くんが煙草を吹かした。校則など知ったことか、という様子だ。