第4章 04
右腕は上がらなかったから、左手で彼の服を掴んだ。半間くんはイラつきながら私を見つめている。
「はんまくん、こそ…私の、ふくしゅうあいて、とら、ないで…」
この男を殺すのは私だ。何年にも渡る屈辱を、半間くんの暴力ひとつで終わらせてなるものか。彼にだって、どこの誰にだって、それは譲れない。
「ばはっ!弥月、お前やっぱオモロ」
半間くんは笑いながら叔父の頭を叩きつけた。死んでしまったのではと思ったが、叔父は気絶しただけのようだ。
「いいぜ、お前が殺せるようになるまで、こいつは保管しといてやるよ」
彼はそう言ってから、自分で羽織っていた黒いパーカーを私に着せ、前をしっかりと閉めた。それから先は、記憶が少し朧気だ。
彼は医者の所へ私を連れて行ったそうだ。右腕とあばらが折れ、身体中打撲だらけ、頬が腫れ中は切れていた。長期の入院が必要と言われ、私は大人しく、ベッドの上の住人となった。