第1章 1章―夏祭り―
―――ほら、その笑顔。
さやかは気づいていないだろうが、エンマもお前に想いをよせているのは確かだ。
『ね、カイラ。今度の稽古は負けないよ』
「あぁ。私もだ」
エンマより強くなることだけが目標だったのに、今ではさやかを守るために強くなりたいと思っている自分がいる。
絶対にエンマより強くなってみせる。
そして、その時がきたら――
さやかは図書室への返却を済ませ、カイラと共に家路についた。
道中、稽古などの話に夢中になっていればあっという間にいつもの分かれ道に到着。
またね。と去っていく後ろ姿を見送るカイラ。
さて、次はどんな稽古をしようか。
ここのところさやかの剣術の腕があがっているのは一目瞭然。妖魔界でも噂になってきている。
恐らくまたライバルが増えるであろう…恋愛の方で。
さやかが稽古の相手をしてくれるのが嬉しかった。
だからエンマと話している姿を見かけた時はとても胸がざわついてしまい、苛立ちを隠せなかった。
その上さやかに気を遣わせてしまう始末…。
私もまだまだだな…。
自分を嘲笑しながらカイラも分かれ道をあとにした。