第1章 1章―夏祭り―
「君は確か…」
『さやかと申します。私も妖怪です』
「噂で知っている」
『?そう…ですか。私もオロチさんのこと知っていますよ。
いつか手合わせお願いできると嬉しいです』
「私は手加減しないぞ」
『勿論です』
オロチも妖魔界で有名な妖怪。
私の“噂"がどんなものかは知らないけれど…
『ふふふ、楽しみにしています』
「や、焼きそばお待たせしました、大王様…」
エンマに出来立ての焼きそばを渡すオロチは何だか落ち着きがない。
「お!サンキュー」
ん?なんかオロチの奴、顔が赤くねぇか?
まさか…な……
また密かにライバルが増えた瞬間だった。
「あれ?エンマ大王、僕たちの分も払ってくれたの?」
「あぁ、急に来て案内まで頼んだからな。今日は財布のこと気にしなくていいぜ」
「さすがエンマ大王!太っ腹ニャン!」
わーい!と歓喜するケータ達。
『エンマ、やっぱり私…』
と言いかけた瞬間、エンマの人差し指がさやかの唇の動きを止めた。