第1章 1章―夏祭り―
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ふと目の前が明るくなった。
いつも見る妖魔界とは違う空気。
ここが現代の人間界…。
私が生きていた頃からすっかり変わってしまってまるで別世界に感じた。
爽やかな水色の旗が所々でなびいている。
よく見ると「レンタル」や「浴衣あります」と書かれていた。恐らくエンマのいうお店はこの辺りだろう。
するとエンマはある店舗を選び、一緒に店内へ入った。
店内にある浴衣はどれも綺麗で人間がほぼいないことから、ゆったりとしていた。
これなら服装に無頓着な私も選びやすい。
少しだが男性用もあった。
しかしそれもつかの間、お店の前に人だかりができ始めていた。
「凄いイケメンがいる」
「モデルさんかしら」
「なにかの撮影でもあるのかな?」
全てエンマに対する囁きだった。
視線も…本当に身体に刺さりそうなくらい凄い…。
人間界でも目立つのね。
横目でちらりとエンマを見ると、聞こえてるはずなのに全く気にも止めてない様子だった。
「さやか」
『ん?なに?』
エンマは手にとった浴衣をさやかに向けた。
「さやかは肌も白くて綺麗だからこの浴衣なんてどうだ?」
…私のを選んでくれてたんだ。