第1章 1章―夏祭り―
大王様にもそんな方がいらっしゃったとは…
良い休日にしてください、大王様。
今日の見張りは程々にしておこうと決めたぬらりひょんであった。
ーーー
今日もいい風。
今日は仕事が落ち着いていたため
宮殿のいつもの場所で巻物に目を通していた。
なんとなくエンマに会える気がしたから…。
没頭しすぎて気づいてないだけなのか、今日はまだぬらりひょん様の雷が落ちてない気がする。
そのせいかいつもより宮殿内はゆったりとした時間が流れているように感じた。
エンマは今日も忙しいのだろうか…。とぼんやり想いを馳せていると
「ーーーさやか!」
少し離れたところからエンマの声が聞こえた。
そんな都合が良いはずない。
彼は忙しいのだから今も仕事を黙々としている頃だ。
幻聴で彼の声が聞こえるなんて…重症だな、私。
再び巻物に目を戻すと
「さやか!」
ハッ!
ふと顔を上げるとエンマの顔が目の前にあった。
『エン…マ?本物?』
「当たり前だろ」
『あれ、仕事は…?』
またサボっていると思われているのかと苦笑いしたエンマ。
「ぬらりが休みをくれたんだ。1日くらい大丈夫だろうって。それに丁度、人間界で夏祭りが行われるらしい。だから、その……今から一緒に行かないか?」
突然のお誘い、さやかは頬を染めて下を向いてしまった。
彼は王族、嬉しいけど私なんかでいいのだろうか…
でもこんな機会はもうないかもしれない。それなら…!