第3章 家族の絆ー後編ー
「うん、ごめん。ごめんね、しのぶ」
しのぶをギュッと抱きしめて、背中をトントンと優しく叩く。
「…あなたはあの日、たくさんの人との約束を破ったのですから覚悟しといた方がいいですよ」
「えー、それは嫌だなぁ」
にっこりと笑いながら言うしのぶと、困ったように笑う桜。
桜の“約束”は口癖みたいなものだったが、決して安易な気持ちで言っていたわけではない。一人一人と交わした約束はどれも大切なものだった。
「…じゃあ今度、久しぶりにスイーツ食べに行こう」
“任務が終わったら久しぶりに甘味処に行きましょう。……約束ですよ”
「………!いいんですか?桜は先生で私は生徒ですよ?」
「バレなきゃいいでしょ」
ニコッと悪戯っぽい笑みを浮かべる桜を見て、今度はしのぶが困ったように笑う。
バレる以前に…今は空気化しているが、この病室には杏寿郎とカナエがいるのだ。
「うふふ、いいんじゃないかしら!ねえ、煉獄先生?」
「む?まあそうだな。理事長先生も何も言わないと思うぞ!」
二人の言葉に桜は「二人もああ言ってるし、今度デートしようね」としのぶに言う。
そんな二人の会話に、「ズルいわ!私も一緒にいいかしら?」とカナエも混ざってくる。
ああ…本当に懐かしいなぁ。時代は変わってもあの頃と同じだ、と泣きそうになる。
何もかも忘れてしまっていた自分が悔やまれるが、それはもう仕方のないこと。これからまた絆を深めていけばいい。
「桜にはたくさんお話があるんです」
あなたが居なくなった後のこと。
あなたが気にかけていた三人組のこと。
カナヲや蝶屋敷の女の子たちのこと。
上弦の弐と戦ったこと。
この時代に生まれ変わってから過ごした日々のこと。
あなたと再会した日のこと。
意識不明と言われたときのこと。
他にもたくさん、数えきれないほどのお話を聞いてほしい。
「これからもたくさんあなたとお話がしたいです」
……あの頃のように。
あなたの恋話を聞くのが好きだった。
たわいのない話をして笑い合った。
一緒に悲しみを分かち合った。
時にはケンカもした。
「そんなの当たり前でしょう?だって私たちは親友なんだから」
桜の言葉に、しのぶとカナエは嬉しそうに笑った。