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鬼滅の刃〜炎の絆〜

第3章 家族の絆ー後編ー


夜になったら寝て、朝になったら目覚める。

楽しかった夢、辛かった夢、怖かった夢、人は誰しも様々な夢を見たことがあるはずだ。

そして夢の内容を覚えている時もあれば忘れてしまう時もある。

生まれてから今まで、何度も同じ夢を見ていた。内容は殆ど覚えていなかったけど、辛くて悲しい感情だけはいつも残っていた。

だけど、今回の夢は鮮明に覚えている。正確には思い出したと言うべきか。

今まで見ていた辛く悲しい感情の残る夢とは少し違うような気もするが、頭のどこかで今の自分ではない自分の声がした。

“やっと守ることができた”と。確かにそう頭に響いたのだ。

ゆっくりと目を開けて、そしてまたゆっくりと閉じる。そんな瞬きを二、三回繰り返して身体を起こす。

起き上がる際、思わず鳩尾付近を触ったのは仕方がない。桜は、猗窩座に鳩尾を貫かれて命を落とした所で目が覚めたのだ。

例えるなら殺されたり、殺されそうになったところで夢から目覚めるアレだ。

そしてしっかりと意識が覚醒して気づく。今いる部屋が自分の部屋ではないことに。

「あれ?」

ここは何処だ、と辺りを見回して察する。白を基調とした薬品の匂いがするこの部屋は間違いなく病院だと。

夢の内容が濃すぎて、自分の身に何があったか思い出せない。

腕を組んで首を傾げ、何があったっけ?と考えていると、ガシャンと花瓶が割れる音がした。

「あ、あ、姉上!」
「…千寿郎?」

「目が覚めたんですね!」と涙目で飛びついてくる千寿郎を受け止める。

え、何これ。私もしかして想像できないほど長い間眠っていたの?なんて思っていると、病室に入ってきた杏寿郎も目を見開いて「目が覚めたのか!?」とクソデカボイスで話すものだから、近くを通りかかった看護師に「ここは病院ですよ。静かにして下さい!」と怒られた。

「あら?煉獄さん、目が覚めたのね。今先生を呼んできます」

そう言って看護師は早々に姿を消し、千寿郎は割ってしまった花瓶の後片付けをした。

杏寿郎は桜に近寄り、そっと手を握って小さく「無事で良かった」と呟いた。

「…また、君を失ってしまうかと思った」

杏寿郎を庇って命を落としたあの日のことを言っているのだろう。

「大丈夫だよ、そう簡単に死なない。…だって約束したでしょう?“必ず生きて帰る”って」


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