第1章 家族の絆ー前編ー
「絶対に生き残ろう!」
その言葉を合図に2人は別れ、早七日。出会った子たちと助け合い、ボロボロになりながらも何とか生き延びた。
そして最初の場所に戻ってくると、そこには既に杏寿郎の姿があった。
「桜!無事だったか!!」
「…杏寿郎も無事で良かった」
「うむ!危うい時もあったが、この通り無事だ!」
腕を組んでハキハキと喋るところを見ると、まだまだ余裕がありそうだ。見たところ大きな怪我もないようなので一安心だ。
「桜はボロボロだな!」
「…生き残るのに必死だったからね」
「うむ!…見たところ大きな怪我はないようだが…大丈夫か?」
「傷が残ったら大変だ!」と身体をペタペタ触って確認してくる。「年頃の女性の身体を触るなど、破廉恥な!」と言いたいところだが、心配してくれているが故の行動だと知っているため、心の中で言ってやった。
暫く杏寿郎の思うままにさせているが…他の女の子にも同じようなことをしたらどうしよう。うん、その時はきちんと教えてあげよう。お触りは変態に値する、と。
「杏寿郎、大丈夫だから」
そっと手を掴み、もう一度「大丈夫」と伝えると、安心したのかホッと息をつく。
…本当に優しいな、杏寿郎は。そんな彼に「心配してくれてありがとう」と伝えれば「当然だ!」と言われた。
「…少ないね」
何が、とは言わない。けれど、そんな桜の言葉を理解している杏寿郎は「ああ…そうだな」と返す。選別前は20人前後いた筈なのに、今は数人程度。あの山で何人もの子供たちが命を落としたのだ。
選別中に知り合った子も見当たらない。自分がこれから歩む道は、生きるか死ぬかのそんな道なのだと改めて思い知らされる。
「前へ進もう。どんなに険しく、辛い道だとしても!」
自信に満ち溢れた、でもどこか優しい表情をして手を差し出した。桜はその手を取り、前へ進む一歩を踏み出す。
「日輪等が届くまでお互い稽古に励もう!」
「…うん」
手を繋いだのは本当に久しぶりで、前まではそんなに変わらなかった手の大きさが、今では一回り以上も違う。これからもっともっと差が出てくるんだろうなぁ、と思うと少し寂しい気もするがこればかりは仕方がない。
「杏寿郎の手、温かい」
今も昔も変わらないのは彼の温度。それが嬉しくて、涙が出そうになった。