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鬼滅の刃〜炎の絆〜

第1章 家族の絆ー前編ー


どれだけ訓練しても壱と弐の型以外の炎の呼吸は使えなくて、杏寿郎たちにバレないように何度も泣いた。

父には「剣士に向いてない。訓練しても無駄だ」と何度も言われ、悔しい思いをしてきた。終いには「お前は女だ。剣士になる必要などない。いずれ嫁ぐ身だ、花嫁修行でもしろ」とまで言われてしまったのだ。

色々と思うことはあったが、それでも父に反論はしなかった。とは言え、ただ黙って耐えるだけなのも嫌なので、反抗という名の行動はとっていたが。花嫁修行ではなく、剣士になるための武者修行を。

なぜ弐の型までしか使えないのに諦めないのか、それは桜にも譲れないものがあるからなのだ。

まだ母が生きていた頃、杏寿郎と二人で剣士になると両親に誓った。そして、あの頃の父はとても嬉しそうにしていたのだ。杏寿郎と一緒に父のようになりたいと、いずれは父を超えたいと言えば「そう簡単に俺を超えることはできんぞ!」と照れ臭そうに喜んでいたのを覚えている。


いつか、いつかあの頃のような父に戻って欲しい。


その思いを胸に頑張ってきた。そしてもう一つ、母との約束を守るため、剣士になると決めたのだ。

例え炎の呼吸を全て使えずとも、鬼を切ることはできる。他の型が無理ならば、壱と弍の型を極めれば良いのだ。何なら炎の呼吸から別の呼吸を派生させたって良い。…それはそれで難しいのだが。



「桜、準備は出来たか?」

杏寿郎の声にハッと我に返る。

「うん、出来たよ。杏寿郎も準備出来た?」
「うむ!完璧だ!」

今日は最終選別当日。急がなければ間に合わなくなる。二人で玄関の方へ向かうと、そこには既に千寿郎が見送りのため待っていた。

「兄上、姉上!」

二人の姿を見つけると、千寿郎は不安そうな表情をしながら駆け寄ってきた。そんな千寿郎の頭を安心させるようにポンポンと軽く撫でる。

「兄、上…、姉上……」
「千寿郎、行ってくる!」
「行ってきます」

心配しなくても大丈夫だよ、と笑顔で答えて、二人は最終選別に向けて歩き出した。

「…っ!行ってらっしゃいませ。…ご武運を!」


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