第3章 家族の絆ー後編ー
無限城に落ちて中を探るように足を進めていたら、上弦の参がいる部屋へと辿り着いた。
弱い俺がまだ生きていたのかとか、桜さんのことや煉獄さんのことを死んで正解だったとか、柱を降りたのは残念だとか嬉しそうに話し始めた猗窩座に苛立ちを覚えた。
猗窩座、お前は桜さんの仇だ。
そして自分の刀には、煉獄さんから譲り受けた鍔が付いている。煉獄さんの思いと共に猗窩座を倒す。
桜さんと煉獄さんに追いつきたくて頑張って訓練したけれど、でもやっぱり猗窩座は強すぎて、心が折れそうになった。途中で義勇さんも参戦して、やっとの思いで頸を斬ったのに…猗窩座は頸を克服してしまった。
決して鬼を許すことはできない。
でも、鬼一人一人にも色々と事情があることを知っている。頸を斬って人間の記憶を取り戻した鬼たちからは、いつも悲しみの匂いがするから。…勿論そうじゃない鬼もいたけれど。
猗窩座からも悲しみの匂いがした。見間違いかもしれないけれど、猗窩座の背後に可愛い女性がいたような気がした。
その後、自決したんだ。
何故かは分からない。だけど、猗窩座の中で何かが変わったのだろう。
……たくさんの人を殺してきたのだから許されることはない。
でも、生まれ変わったその時は猗窩座とその背後にいた女性が幸せであったら良いなと、そう思う。
炭治郎は天井を見て涙を流した。
「仇、討てました。煉獄さん、…桜さん」
“ありがとう”の言葉と共に、フワッと暖かな風が頭を撫でた気がした。
猗窩座を倒したが、それで戦いが終わったわけではない。家族の仇でもある無惨を倒すまでは自分がここで倒れるわけにはいかない。
そう思いながら無限城を走り続けていると、運がいいのか悪いのか…無惨と遭遇した。無惨との戦闘中、他の柱たちも次々集まってきて無惨に挑むが、次元が違いすぎるかのように強すぎた。
あの悲鳴嶼さんや不死川さんでさえも苦戦するほどだ。
無惨の攻撃で腕や足、指を失いながらも戦う義勇さん、悲鳴嶼さん、不死川さん。己の身が危険になった時には身を挺して助けてくれた伊黒さん。素手で挑んだ甘露寺さん。
みんなの無惨討伐の強い思いが一つとなって、夜明けと共に無惨は消滅した。
………筈だった。