第3章 家族の絆ー後編ー
緊急招集で鬼殺隊員が無限城で戦っている時、俺と煉獄親子は新たなお館様、輝利哉様の護衛をしていた。
「なあ煉獄…」
「何だ?」
「俺さ、知ってたんだよ。桜が胡蝶カナエの仇を討つために毒を摂取していたのを」
俺の言葉に煉獄は驚いた表情をしていた。近くにいた煉獄の親父さんも同じ顔をしていたもんだから、笑いそうになった。
「あいつはさ、腕力が無い分、足の速さで威力を加えて鬼を斬っていただろ?でも上弦にはそれが通用しないと考えていた」
それは胡蝶も同じで、だから二人は身を犠牲にして倒す方法を選んだんだ。それを知ったのは偶然だったが。
「凄ぇよ、桜は」
暗い世界で生きてきた俺とは違う。明るく、そして優しくて…俺にとって桜は光そのものだった。
「惹かれてたんだ、あいつに。だから、嫁にならねぇか?って言ったこともあったなぁ」
「残念だったな、桜はやらん!それ以前に宇髄、君は嫁が三人もいるだろう!」
カッと目を大きく見開いて凝視してくる煉獄。親父さんも同じようにカッと目を見開いてこっちを睨んでいる。……怖ぇよ。
「…夫がいれば、あいつは死を選ばないかもしれないって思ったんだよ。ま、そんな俺の考えもお見通しみたいだったけどよ」
宇髄は空を見上げて桜の言葉を思い出す。
“ごめんね、宇髄さん。気持ちは嬉しいけど私は宇髄さんのために生きることはできない”
予想の範囲内だ。だってあいつは不死川に惚れていたからな。
“奥さん三人をちゃんと守ってあげてね。宇髄さんの一番は奥さんたちでしょう?その中に私も入れてもらえるのは嬉しいけど、守るものが増えるとその分宇髄さんが大変になるよ”
桜の言葉は上弦の陸と戦った時に身に染みて分かった。守りたいものが多ければ多いほど守りきれない。
下手したら嫁三人あの戦いで失っていたかもしれねぇ。そう思うとゾッとするが、それももう過去の話だ。今は家族四人で仲良く暮らしてる。
“宇髄さん、お嫁に誘ってくれてありがとう”
あいつも家族になってくれてたら今頃は…と何度も思う。
そう思うくらい桜に惚れていた。
「義勇、炭治郎、上弦の参を撃破」
襖の向こうから輝利哉様の声が聞こえた。
…なあ、ちゃんと見てるか?竈門と冨岡が仇を討ったみたいだぞ。