第3章 家族の絆ー後編ー
広い空間、無限城の中を伊之助は駆け回っていた。
無限城での戦いが始まってどのくらい時間が経ったのか分からない。
分かったことと言えば、鴉の情報で善逸が新しい上弦の陸と遭遇して撃破した事と、しのぶが上弦の弐と遭遇し戦っているということだ。
兄弟子が鬼になって、アイツの師は自害した。
兄弟子を討つのは自分の役目だと、少しでも煉子の速さに近づけるようギョロギョロ目ん玉のところで猛特訓して、新しい技を編み出していた。
ずっと寝てた方が良いんじゃないかと思ったこともあったが、アイツはスゲェと思う。
「畜生!俺だって、俺だって紋逸に負けてらんねぇ!」
「猪突、猛進!!」と自分の感覚を頼りに前へと進んでいく。
走り続けていると下から禍々しい気配がしたため、そこを破壊して伊之助らしい天井からの登場だ。その部屋にはしのぶの継子のカナヲがいて、上弦の弐と戦っていた。
刀を奪われて絶体絶命のカナヲを危機一髪で助けながら考える。
目の前には倒すと約束した上弦の弐がいる。
しのぶは上弦の弐と戦っていたのではなかったか?
この部屋にはいない。…どこに行った?
「……姉さんはアイツに」
カナヲの言葉で理解した。しのぶはもういないのだと。
柱がまた一人犠牲になった。
鬼殺隊に入ってからこの短期間で柱の数が次々と減っていく。
“万が一私の身に何か起きたら…上弦の弐を倒してほしい”
これ以上大切な奴は失いたくない。煉子との約束を果たす時が来た。
伊之助は片方の日輪刀に付けた桜の鍔に話しかける。
「敵討ちだ!行くぞ桜!!」
カナヲからの情報で、もう少ししたらしのぶの毒が効いてくるはずだ。
それまでは相手と距離を保ちつつ戦いながら、毒が効いてきたらカナヲと二人で一気に頸を斬る。
上弦の弐はしのぶだけでなく、自分の母親の仇であることも知った。絶対に負けるわけには行かない。
「師範の毒が効いてきた!」
カナヲが花の呼吸終ノ型を使い、伊之助もカナヲと共に攻撃する。
「獣の呼吸、思いつきの投げ裂き!」
しのぶの毒のおかげで、苦戦していた伊之助とカナヲは遂に上弦の弐を撃破した。
「やった、やったんだな……!」
伊之助は刀に付けた鍔に向かって話しかける。
「約束、果たしたぞ桜!」
“ありがとう、伊之助くん”