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鬼滅の刃〜炎の絆〜

第3章 家族の絆ー後編ー


「竈門少年、君には俺の鍔を渡そう」
「え?!」

千寿郎との話が終わったら、今度は杏寿郎が自分の鍔を取り出して炭治郎の手を取り、その上に乗せた。

「あ、あの…!流石に受け取れません!!」
「…俺はもう柱を続けることは出来ないだろう。だから、俺の思いを君に託したい」

杏寿郎は左目を失くし、怪我も酷かった。柱として復帰するのは難しいと判断したのだ。

弱き物を守るため、そして鬼の始祖を倒すために戦ってきた杏寿郎だが、これからは隊士の育成に力を入れることにした。

「俺の思いと共に受け取ってもらえないだろうか」

大きな瞳で炭治郎をじっと見据える。流石の炭治郎も、そんな杏寿郎の思いを無下には出来ず、有り難く受け取った。

「ありがとうございます。大事に使わせていただきます!」
「うむ!…竈門少年。怪我が完治したら、黄色い少年と猪頭少年と共に鍛えてあげよう!約束だ!!」
「はいっ!宜しくお願いします!」





*****





杏寿郎と千寿郎が愼寿郎の部屋を訪れると、愼寿郎は部屋の縁側に腰をかけ庭を眺めながら酒を飲んでいた。

「…お戻りでしたか」
「……何の用だ」

炭治郎に頭突きをくらって機嫌が悪いかと思ったが、いつも通りだったので少し安心した。

「父上にお聞きしたいことがあります。“日の呼吸”について」
「……詳しくは知らん。さっさとこの部屋から出ていけ!」

いつものように追い出されそうになるが、このままでは何も変わらない。そう思った千寿郎は珍しく愼寿郎に自分の気持ちをぶつけた。

「俺はっ、俺は姉上に託されたことを成し遂げたいんです!」
「………!」


“身体を大切にしてほしいです”


まるで遺言のような言葉だった。

隠から聞いた。桜の身体は藤の花の毒で満たされていたと。

桜は、自分の身を犠牲にする覚悟を持って鬼殺隊に属していたのだ。


「…話すことはない。さっさと出ていけ」


愼寿郎は空を見上げて桜を思い出す。久しぶりに見た娘は亡き妻に本当に良く似ていた。

「たまには帰ってこいと言ったが、無言の帰宅を許した覚えはないぞ、バカ娘」

俯き涙を堪えるが、止まることなく溢れ出る。泣いたのはいつ振りだろうか。

「…うっ、…うっ、…桜っ」


少しずつ、煉獄家も変わりはじめようとしていた。


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