第3章 家族の絆ー後編ー
「竈門少年、折角来てくれたのに残念な結果ですまない!」
「い、いえ!気にしないで下さい」
杏寿郎が腰を直角に曲げて謝ってきたので、炭治郎は「顔を上げてくださいっ」とあたふたしながら言った。
そんな二人を見て可笑そうにクスッと千寿郎は笑う。
「炭治郎さん、今日は来て下さりありがとうございました。姉上の事が聞けて嬉しかったです。機会があれば私も善逸さんや伊之助さんとお会いしてみたいです」
「はい!きっとあの二人も喜んで会いに来ると思います。帰ったら伝えますね」
「はいっ。…炎柱ノ書については、私が修復してみます。父にも聞いて、何か分かったら鴉を飛ばします」
“千寿郎は文才に長けている。だから、いつか煉獄家に訪ねてくる子がいたら、その子を助けてあげてね”
姉上…、
“きっと鬼殺隊の力となるから”
煉獄家を訪ねてくる人とは炭治郎さんのことだったんですね。
“心の思うまま、自分の進むべき道を”
俺は見つけました。
俺が今すべきことは炭治郎さんの力になって、少しでも鬼殺隊へと貢献することです。
“私はずっとあなたの味方だから”
いつまでも立ち止まってはいられない。
俺は前へと進みます。だから姉上…どうか俺たちを見守っていて下さい。
「炭治郎さん、これをあなたに」
そう言って千寿郎は、懐から布に包まれた物を出して炭治郎に渡そうとする。
大事に布に包まれていた物、それは桜の刀の鍔だった。
「姉上は炭治郎さんのことを気にかけていました。だから、これは炭治郎さんが持っていて下さい。きっとあなたを守ってくれます」
「そ、そんな…!そんな大事な物受け取れません!」
両手と顔をブンブン振って全力で拒否する。
それを見た杏寿郎は、フッと笑い、千寿郎の肩にポンっと手を置いた。
「兄上?」
「それは竈門少年よりも猪頭少年に渡した方がいいだろう」
「猪頭?少年??」
千寿郎はよく分からないと首を傾げると、炭治郎が伊之助のことだと教えてくれた。
「桜は猪頭少年に何かを託したようだ。だから桜の鍔は彼に渡そう。頼めるか?竈門少年!」
「はい、勿論です」
千寿郎から預かり、大切に懐へとしまう。
「桜さんの思いが詰まったこの鍔は、必ず伊之助に渡します」
「はい、お願いします」