第3章 家族の絆ー後編ー
「ひっ!何あれ何あれ!腕が長いんですけどぉ…!!」
鬼のいる車両まで引きずられてきた善逸は、座席の後ろに身を隠しながら鬼を見ていた。
「先手必勝だ!」と伊之助が鬼に飛び掛かるも、逃げ遅れた人が一人いる。伊之助が鬼に吹き飛ばされたと同時に杏寿郎は動き、逃げ遅れた男性をお姫様抱っこして助けた。
「……お姫様抱っこ、私もしてほしーい!」
なんて棒読みで呟いてみると、隣にいた炭治郎が「何言ってるんですか」という目で桜を見た。
杏寿郎にも聞こえたようで、男性を避難させた後「いつでもしてやるぞ!」と鬼を前にしてノリノリな反応だ。
「さて、これで問題ないな。手短に終わらせよう」
杏寿郎の言葉と同時に今度は桜が動いた。
光の呼吸 参ノ型 光彩陸離!
辺り一面に散らばる光。それと同時に鬼も光となって消えていった。
「凄い…、桜さんも一撃で……」
それに綺麗だ、と消えゆく光を眺めていた。
匂いで強いということは何となく分かっていたが、今まで桜の技を見たことがなかった炭治郎は、こんな凄い人と共に行動していたのか…と改めて思い知った。
「スゲェや!オイラを弟子にしてくだせぇ!」
「オイラも!」
「おいどんも!」
「いいとも!みんなまとめて面倒を見てやろう!!」
はははははは!と腕を組んで高笑いする杏寿郎と、その周りを「煉獄の兄貴ィ!」と飛び跳ねる三人たち。
何だこいつら…と白い目で眺めていたところで意識がシャットダウンし、暗闇へと落ちていった。
*****
目を開けると、そこは煉獄家の自分の部屋だった。
あれ?とここで疑問に思う。何で生家の、しかも自分の部屋にいるのだろう、と。
「これは、夢……?」
それとも生家を出ていった方が夢?なんて考えながら部屋を出たら確信した。
「おはよう、桜」
これは夢だ、と。
「母、上……」
そう呟いた瞬間、涙が溢れた。
「あらあら…珍しいですね、桜が泣くのは」
瑠火は桜の目線に合わせるように膝を床についた。そこでようやく気づく。自分が八歳の頃の姿になっていることに。
「怖い夢でも見ましたか?」
クスクス笑いながら話す母がとても懐かしくて、溢れ出る涙は中々止まらなかった。