第2章 家族の絆ー中編ー
木に吊るされた伊之助に「隠が来るまでそこで待機ね、ばいばーい!」と言ってその場を離れた。
後ろで「ばいばいじゃねぇぞコラァア!俺と勝負しろ!煉子!半々羽織ー!!」と叫んでいたが、桜も冨岡も無視した。
「冨岡さん、私はこっちに行きます」
「…承知した。俺はこっちから行く」
では、と二人は別れて、炭治郎を探す。
この山で色んな鬼に遭遇したが、十二鬼月には出会えていない。先ほど倒した鬼は、伊之助と戦っている時「俺の家族を虐めるな」と言っていたような気がする。
普通鬼同士が群れることはないはずだが、この那田蜘蛛山の鬼たちは群れて暮らしている。
「…家族、ね」
家族ごっこの親玉が十二鬼月か、と考えていると、前方から禍々しい気配がした。そしてそこに見知った人物の声もした。
「ヒノカミ神楽 円舞!」
ヒノカミ神楽……?
初めて聞く言葉に不思議に思いながら近づくと、いつも使っている水の呼吸ではなく、違う呼吸を使っていた。
“火”を使った呼吸。でも炎の呼吸とは違う。
「綺麗……まるで舞のようだわ」
あれは何の呼吸だろう…と思ったところで父の言葉を思い出す。
“日の呼吸、全ての呼吸の原点。始まりの呼吸”
あれが父の言っていた日の呼吸、なのだろうか。
「そう言えばあの耳飾り…」
父がよく読んでいた歴代の炎柱の書に載っていた気がする。
「…血気術、爆血!」
「俺と禰󠄀豆子の絆は誰にも引き裂けない!」
禰󠄀豆子が血気術で糸を燃やし、炭治郎は呼吸を使って突き進んでいく。
日の呼吸の使い手かもしれない炭治郎と、人間を襲わない鬼の禰󠄀豆子。
二人の絆は誰よりも強い。
この二人は今後の鬼殺隊と鬼との戦いを大きく変えるような、そんな気がした。そしてお館様もそれを見越しているからこそ、禰󠄀豆子の事を黙認しているのかもしれない。
「ここは冨岡さんに任せて他を見回ってこよう」
冨岡を発見したので、後は託してその場を離れた。
伊之助は助けたし、炭治郎は冨岡さんが見てくれる。問題は善逸だ。ビクビクしながらも大丈夫だとは思うが、あんなのでもやはり心配なのだ。
「早く見つけないと」
無事でいてほしいと願いながら、鬼の気配を探りつつ足を早めた。