第2章 家族の絆ー中編ー
森の中へ入ると不気味な気配が濃くなっており、あまり宜しくない状況になっていた。生き絶えた鬼殺隊員が何人もいるのだ。
早く炭治郎や伊之助を探さないとヤバイことになっているかもしれない、と桜は焦っていた。
「(…どこにいるの)」
気配を探りながら足をすすめていると、前方にデカい鬼と頭を掴まれている伊之助がいた。状況からしてどう見ても伊之助が負けている。
あれはヤバイと判断した桜は、スピードを上げ伊之助を掴んでいる腕を斬り落とし、伊之助の前へと立つ。
「大丈夫?」
「…お前、煉…子」
誰だ煉子って…。
それよりも今は鬼を始末する方が先と判断し、鬼の方を向いた。
「…光の呼吸 四ノ型 極光」
辺り一面が青や緑色をした幻想的な光に包まれる。とても綺麗で、時間が止まったかのようだ。そして鬼の頸も斬られていた。
「あの鬼を一撃で…」
伊之助は呆然と呟いた。そしてそんな伊之助の横にいつの間にか一人の男が立っていた。
「いつの間に…!」
全然気配を感じなかった、と吃驚している伊之助を無視し、言葉を発した。
「…倒したようだな」
「あっれー、冨岡さんじゃん」
「久しぶりだね」と声をかけると、じっと桜を見つめる。
そんな整った顔で見つめられると流石の私も照れますよ。しのぶ、ごめんねぇ!と心の中で叫んだ。
「……どこにいた」
「はい?」
相変わらず言葉が足りない。冨岡は“今までどこにいた”と聞いたつもりなのだが、肝心の“今まで”が抜けている。
「連絡ないから心配した」
「冨岡さんに連絡する必要あります?」
「!!」
心外だ!とでも言うような衝撃を受けているようだ。
因みに冨岡は“煉獄やしのぶたちが長期任務に出てから連絡ひとつないから心配していた”と言ったつもりでいる。
本当に言葉が足りなさすぎる。側から見れば恋人を心配するような聞き方だ。
「新人隊士と鬼の少女を見るよう命じられたんですよ」
「…!」
「冨岡さんの助けた子、でしたっけ?この山に来ているから見かけたら声をかけてあげて下さいね」
「……そうか」
二人で会話していると、蚊帳の外だった伊之助が「俺と勝負しろ!」と叫び始めたので、冨岡が縄でぐるぐる巻きにして木に吊るした。
…手際が良かったけど、そう言う趣味でもあるのだろうか。