第2章 家族の絆ー中編ー
「ちょっと何なの?!何なのォこの人!!」
「桜さんを見たら顔を青くしてブルブル震えるとか!失礼じゃない?ねえ、失礼じゃない?!」と指差して叫ぶ善逸に思わず笑いそうになってしまった。
とんでもない程の女好きだが、そこを除けばある意味普通の男の子なのだ。
「おおお、お前こそ何なんだ!れ、れれれ煉獄様に向かって“桜さん”呼びしやがって…!」
「このお方はなぁ…!」と口にしたところで、ピクリと反応する。これ以上喋らせてはダメなやつだ、と感じた桜は、隊士の後ろに回って慌てて口を塞いだ。
「柱な…モガッ?!」
耳のいい善逸のことだ。“柱”と言うところで口を塞いだので確実に聴こえていただろう。
やってしまった…と思うも、この那田蜘蛛山には十二鬼月がいるだろうと言っていた。柱だと知られるのも時間の問題だった。
善逸の方を見ると顔面蒼白で、ブルブル震えながらこちらを指差している。
怖がらせてしまっただろうか…。まあでも叫んでいないだけマシなのかもしれない。
「桜さん桜さん…、その人、死にかけてます……」
善逸が震えていた理由。
それは桜が両手で鼻と口を塞いでいたからである。つまり名も知らない隊士は今、窒息寸前なのである。
「んー!んー!!」
「あ、ごめんね」と言って手を離した。
「軽ッ!軽ッッ!!」
「全然謝ってないよね?!謝ってないよねぇ…!!気持ちが全然こもってなかったよぉぉぉ!」と善逸は叫び始めたので、「うるさいよ」と制裁してあげたら黙ってくれた。
震えていた隊士から、那田蜘蛛山で何があったのかを聞いた後、近くにある藤の家紋の家でまで行って怪我を治すよう伝えた。
「さて、結構時間が経ってしまったし炭治郎くんたちが心配だから私は行くけど」
「善逸はどうする?」と聞くと、ビクッと身体を震わせながら「俺も行きます」と小さく呟いた。
「そう、じゃあ気をつけてね。ここ、十二鬼月がいるかもしれないから」
「え?えぇ?!桜さんが俺を守ってくれるんじゃないんですか?柱なんでしょ!?……って、柱ァア?!」
今頃になって気付いたようで「自分の身は自分で守りなさいね」とだけ言い残し、その場から消えた。
「え、消えた?!待って、桜さぁぁぁん!!」