第2章 家族の絆ー中編ー
時間はかかったが、三人の怪我が完治した。
そして完治したその日に鎹鴉がやって来て任務を告げた。
「北北東ー!四人ハ北北東ー、那田蜘蛛山へ行ケェ!」
「治って速攻任務なの?!何、何なの!俺に死ねってことぉ?!」
騒ぎ始めた善逸の頭にゲンコツを落とす。
「いつまでもここにお世話になるわけにもいかないでしょ?」
「ううう…桜さんの愛の拳骨……痛いけど幸せ。愛を感じる」
「……え、キモイ」
善逸の言葉にドン引きした。
三人に準備をしたら門のところへ行くよう伝え、自分も身支度を整える。すると、一羽の鴉が桜の肩に降り立った。
桜の鎹鴉、燈(あかり)だ。
「那田蜘蛛山ノ鬼、十二鬼月ノ可能性アリ。隊士ガ何人モヤラレテイル、気ヲツケテ」
「十二鬼月…ね」
炭治郎たちで大丈夫だろうか、と不安になるが、彼らに足りないのは経験だ。今回の任務は成長するための良い機会となるかもしれない。
いざとなったら守ってあげれば良いか、と自己完結し、三人が待っているであろう門へと向かった。
「どのような時も誇り高く生きて下さいませ。…ご武運を」
ひさの言葉を合図に、四人は那田蜘蛛山へと向かった。
那田蜘蛛山は禍々しい気配が強く、善逸はビクビク怯えている。
山の入り口付近に鬼殺隊員が倒れていたので話しかけると、何かの糸と繋がっていたようで、山の中へと連れ戻されそうになったところを桜が切って助けた。
「た、助かっ、……た」
四つん這いになってガクガク震えている隊士を見て、落ち着くまで待つことにしようと決めた桜をよそに、炭治郎と伊之助は、「先に行きます!」と那田蜘蛛山へと入っていった。
「ちょっと…」
待ちなさい、という言葉を聞かず、行ってしまう二人に頭を抱える。
中がどうなっているのか心配なのは分かるが、こういう時こそ情報収集もするべきだという事を今度しっかり教えてあげようと思った瞬間だった。
そして隣では「桜さん、炭治郎たちが俺たちを置いて行ったァア!」と泣き叫ぶ善逸がいる。
うるさかったので少し黙らせてあげた。
「さて、そろそろお話を聞いても良いですか?」
震えていた隊士が顔をあげ、桜の顔を見た瞬間、今度は顔を青くして震えだした。
……解せぬ。