第2章 家族の絆ー中編ー
鼓屋敷で出会った三兄妹とは途中で別れ、鴉に案内された先は藤の家紋を掲げる屋敷だった。
三人とも怪我をしているので、しっかり静養するようにとのことだ。
鼓屋敷での任務が終わり、外でカオスな状態になっていたときに知ったのだが、どうやら桜を追いかけ回していた猪頭の少年こと嘴平伊之助も炭治郎の同期らしい。
つまり、彼もまた桜が気にかけなければいけない人物なのだ。
「(今回の新人隊士…カナヲも含めて個性強すぎでしょ)」
善逸が炭治郎の同期だと知ったときも個性が強いと思ったが、伊之助はその上を行く。
大丈夫か、私…と心に問いかける。
桜は杏寿郎と違って隊士の面倒など見たことがない。そもそも面倒を見ること自体向いてない。
なので、お館様が何故“二人の新人隊士も宜しくね”とお願いしたのか、正直謎だった。
ただ、新人三人を見て直感で思ったことがある。彼らは確実に上にあがってくるだろう、と。
柱までの道のりは遠いが、彼らはいずれ柱として鬼殺隊を支えるまでに成長するだろう。そんな輝きを持っている。
縁側に座り、空を眺めていると、後ろから声が掛かった。
「お久しぶりでございます」
「お久しぶりです、ひささん。すみません、個性のある子たちですけどお世話になります」
「いえ、構いませんよ。お三方とも肋骨を折っていらっしゃるようで、お医者様から安静にとの指示が出ております」
ひさの言葉に苦笑する。きっと鬼にやられた傷だけではない。
「仲間同士の戦いは御法度なんですけどねぇ…」
桜の呟きに、ひさは「あらあら…」と隣でお茶を飲みながら話を聞いている。
「桜様もご立派になられましたねぇ」
昔を懐かしむように話すひさに、ニコッと笑いかける。
ひさには、隊士になってから随分とお世話になっている。ここは、カナエに教えてもらったお気に入りの藤の家紋の家なのだ。柱になってからもたまに顔を出していた。
「ひささんの作る天ぷらが食べたいなぁ」
「はい、今日のお夕食はサクサクの衣がついた天ぷらにしましょう」
「わーい!ありがとう、ひささん!」
嬉しくて、ぎゅーっと抱きつく桜に、ひさは「あらあら…」と嬉しそうに微笑んでくれた。