第2章 家族の絆ー中編ー
「てる子ちゃん、炭治郎くんたちと一緒じゃなかったの?」
この部屋にいるのは二人だけ。鬼殺隊である炭治郎や善逸の姿はない。
「緑の服のお兄ちゃん、迎えにくるまでここで清兄ちゃんを守れって…」
「うん?てる子ちゃんがお兄さんを守るの?」
「清兄ちゃん、怪我してるし疲れてるだろうからって…、鬼が来たら鼓を叩けって……」
桜が来て安心したのか、目から大粒の涙を流しながら話してくれた。
「でもね、つ、鼓が消えちゃったの」
よく分からないが、鬼がなんらかの理由で鼓を落とし、その鼓を叩くことで鬼を遠ざけることが出来た、と言うことなのだろう。
そして鼓が消えたと言うことは、炭治郎か善逸のどちらかが鼓の鬼を倒したのだ。
「よく頑張ったね」
ポンポンっとてる子の頭を撫でてあげる。そして隣にいる子はてる子のお兄さんで間違いなさそうだ。
炭治郎が迎えにくるみたいなので、それまで一緒にここにいようと考えていると、背後に鬼の気配を感じた。
「うひひ、稀血の匂いだ」
異臭を放った大きい鬼が「ご馳走だ!」と嬉しそうに近づいてきた。
「ひっ!」
てる子と清は互いにギュッと抱きついて震えている。おまけに異臭をが酷く、鼻が曲がりそうだ。
これは手短に終わらせるべきだと判断した桜は、二人を守るように前へ出る。
「お、お姉ちゃん…」
心配そうに桜を見るてる子に、大丈夫だよ、と笑顔を見せる。
「光の呼吸 参ノ型 光彩陸離」
桜の刀から眩い光が溢れ出し、辺りに入り乱れる。そしてそのまま鬼の頸が胴体から切り離されて光と共に消えていった。
「…すごい。お姉ちゃん、すごい!」
かっこよかった!と興奮しながら近寄ってきた。清も安心したような表情で寄ってくる。
「助けてくれてありがとうございます」
桜がいなかったらと思うとゾッとする。
「どういたしまして。さっき鬼が稀血って言っていたけど…君が稀血なのかな?」
「よく分かりませんけど、僕のことを鬼が稀血って言うんです」
だから狙われたのか、と納得する。
そして藤の花の香り袋がポケットに入れてあったのを思い出し、清に渡した。
「これを持ってるといいよ。藤の花が守ってくれるから」
「ありがとうございます」
懐に入れたのを確認し、炭治郎が来るのを待った。