第2章 家族の絆ー中編ー
矢印鬼を炭治郎が倒し、手毬鬼を珠世が血気術で鬼舞辻の呪いを発動させて倒した。
「頑張ったね、炭治郎」
お疲れ様、と頭をポンポンっと撫でてあげると、炭治郎は目を見開きその後頬を染めて嬉しそうに笑った。
長男だから頭を撫でられるのは慣れていないようで新鮮だったらしい。
「ありがとうございます!桜さんは傷ひとつ無いですね」
手毬がビュンビュン飛び回っていて、珠世や愈史郎も傷を負ったが、桜は傷どころか汚れてもいない。
凄いなぁ…と感心していると、愈史郎が「こいつはずっと見てただけだったからな」と言った。
「ま、いいじゃない。みんな無事だったんだから」
日が昇り、桜は今まであったことをお館様に報告する為、鴉を飛ばしてから屋敷の中へと入った。
するとそこには、炭治郎と禰󠄀豆子、珠世、愈史郎がいた。
珠世が「禰󠄀豆子さんを預かりましょうか」と言う話をしているようだ。炭治郎は迷っているようだが、禰󠄀豆子は離れないとでも言うように炭治郎の手を握る。それで決心したようだ。
「俺たちは一緒に行きます。離れ離れにはなりません、もう二度と」
兄弟にもいろいろな形があるが、この二人の兄妹愛は本当にすごいと思う。お互いに信頼しあう、そんな絆で繋がっているのだ。
正直、羨ましいと思った。
桜たち姉弟とはまた違った形の家族の絆。家族を失って、より強くなった絆。
二人が行く未来は決して平穏ではなく、むしろ困難な方が多いと思うけれど…、これからもそんな二人を見守っていこう、そう心に決めた。
二人の絆が壊されないように。
「炭治郎、……お前の妹は美人だよ」
愈史郎の言葉に笑顔になる炭治郎。珠世たちと炭治郎の間にも、違った形の小さな絆が生まれたようだ。
「…お前も、綺麗だ」
「へ?」
「…っ、二度は言わん!」
顔を赤くしてプイッとそっぽ向く愈史郎に、桜はクスクス笑う。実はしっかり聞こえていたのだ。
「約束、必ず守れよ」
「…約束?」
「お前の弟、俺たちに紹介してくれるんだろ!」
珠世は何かを察したらしく、「素直じゃないですね」とクスクス笑う。
「…死ぬなよ。お前も、炭治郎も」
愈史郎の言葉にニコッと笑い、大きく頷く。
この約束が果たされることはないことを、今はまだ誰も知らない。