第2章 家族の絆ー中編ー
警戒するように桜を見る珠世と愈史郎。そんな二人を見て桜は苦笑する。
「炭治郎くんと出会って、私の知る鬼の知識を翻されましたね」
禰󠄀豆子は他の鬼と明らかに違う。そしてそれは珠世や愈史郎にも言えること。
「…私は、あなた達を見張るつもりなどないですよ。それに…お館様は珠世さんの存在をご存知なのでは?」
「……会ったことはありませんが、恐らく」
珠世の言葉に桜はニコッと笑う。
討伐依頼が出ていない時点で黙認されているのだろう。だったら報告のみで十分だ。
「鬼殺隊は珠世さんと愈史郎くんの力を借りる時がきっと来ると思うんです。だから、これからも宜しくお願いしますね」
「……!」
「私もできる限りの協力はします。…禰󠄀豆子ちゃんを人間に戻してあげたいですしね」
優しい表情で言う桜に珠世と愈史郎は警戒心を解く。彼女は信頼できる、そう感じ取ったからだ。
珠世はそれとは別に、不思議な気持ちになっていた。記憶は曖昧だが、昔…、始まりの呼吸の剣士と共にいた燃えるような炎の剣士とどことなく似ている気がしたからだ。
見た目は全く違うが、彼女の静かに燃える熱き炎が当時の炎柱と重なった気がした。
「…貴女は、炎の呼吸の使い手…ですか?」
珠世の言葉に目を見開き、そして悲しそうな表情に変わる。
「残念ですが違います」
「…そうですか。ごめんなさいね、変なことを聞いて」
「いえ、構いませんよ。……珠世さんは“煉獄家”を知ってますか?」
“煉獄家”
代々炎柱は煉獄家から排出されていると聞く。当時の炎柱も煉獄家の血を引いていたと聞く。
「知っています。…貴女からは、かつての炎柱と似た雰囲気がするのです」
だから炎の呼吸の使い手かと聞いてきたのか、と納得する。
「私も“煉獄”なんです」
「え?」
「珠世さんの記憶にある炎柱の子孫にあたります」
「私は母似なので、あの派手な髪をしていないですが…」と付け足す。
珠世は桜の言葉を聞いて納得しているようだった。
「私の弟二人は煉獄家独特の髪をしてますよ」
見たらすぐに分かります、とクスクス笑いながら言った。
「…いつか私もお会いしてみたいです。貴女の弟さんに」
「そうですね、いつかきっと…紹介しますね」
「楽しみにしています」と笑顔で約束を交わした。